俺はなまえが仁王が浮気するなんて有り得ないと思っていた。でもあの頃は幼くて、分かっていてもコントロールがきかなくて。酷くなまえを拒絶した。その結果、お前を傷つけた。今思うと、あの頃の俺は馬鹿だったなぁと改めて実感する。なまえ…ごめんな。





***




俺はなまえと仁王が許せなかった。あいつらが浮気?ありえねぇ。しかも相手はあの仁王。俺となまえとかなり近い距離にいたあいつが。なんでだよ、いつの間にそんな関係になってんだよ。泣きたいのに泣けない。叫びたいのに叫べない。殴りたいのに殴れない。むしゃくしゃしまくった俺が逃げた先は…女だった。女なんか誰でもよかった。兎に角この感情をどうにかしたくていろんな女と体を重ねた。でも情事中は忘れられるのに、終わればまた感情がこみあげてくる。俺はもう…どうすればいいんだよぃ。



なまえが休んだ日、いつも通り違う女の所に行こうとして教室を出ようとした時、ばったり仁王に会ってしまった。よりによってこいつかよ…。俺はシカトして行こうとしたが、仁王の低くて特徴的な声が俺の足を止めた。俺はなんだよと怠そうに言うつもりだった。言おうと思って振り返った瞬間、頬に衝撃が走った。教室の中がやたらざわめくのを感じた。少し吹っ飛ばされて頬に痛みを感じた俺はようやく状況を理解した。仁王に殴られたんだ。


はっ、なんで俺仁王に殴られなきゃなんねーの?俺の"元"カノジョに手ぇ出してきたのはお前のほうだろぃ。まじ意味分かんねー。今まで抑制してきた感情があふれ出した気がした。殴られただけじゃ済まない俺は思いっきり仁王の頬を殴った。あいつは避けるつもりなんてなかったらしい。仁王の口からはうっすらと血が流れていた。


「気は済んだか?」

「…は?」

「まあなまえの心の痛みに比べれば、俺やおまんの傷は軽いもんじゃ」


その言葉に血が上った俺は無我夢中で仁王を殴った。でもあいつは返してこない。なんだよ、どいつもこいつも腹立つんだよ!俺だって苦しいんだよ!胸がいてぇんだよ!なのに…なんでそんな事言われなくちゃいけねぇんだよ!

俺は誰かが止めに入るまで仁王を殴り続けた。



それから数日後、なまえが学校に来た。俺が教室に入ってきたとき、ちょうどなまえと目が合った。なんでそんな辛そうに俺を見るんだ。まじうぜー。お前が浮気した癖に。イラついた俺はすぐに視線をそらし、佐久間の席へ向かった。そのとき仁王はなまえの腕を引っ張って教室を出て行った。なんだよあいつら…ほんとムカつく。

「なぁ美緒、今日も俺ん家来いよ」

あぁ、ほんとに…ムカつく。







***







卒業式の日、久しぶりになまえを見た。前より少し痩せたか…?髪も大分伸びてる。
なまえはクラスメイトと楽しそうに写真を撮っていた。…もう俺には関係ないけど。ジャッカルのもとへ向かう途中、なまえと一瞬目が合った。なまえのまっすぐな目を見るとどうしても動揺してしまう。俺はすぐに目をそらして歩いた。しばらく歩いて振り向くと、なまえの姿はなかった。

「おぉブン太ここにいたのか!」

「うるせージャッカル!」

「は!?(なんで怒られてんだ俺!?)」


続き→