一週間ぶりの学校は少し気まずい。クラスのみんながどんな反応をするのかが少し怖い。そして何より、同じクラスにはブン太と仁王君がいる。それが怖くて私は一週間も行けなかった。


ガラッ

意を決して教室のドアを開けた。クラスメートの少し驚いたような顔でお出迎え。

『お、おはよう…』

恐る恐る挨拶をするとみんなは戸惑いながらも笑って挨拶を返してくれた。少し安心した。ブン太と仁王君は朝練のためまだ来ていない。このまま来なければいいのになぁと思う。それもつかの間、教室がまたガラッと開いた。…来てしまった。ブン太は私を見ると少し驚いたような顔をしたが、素っ気ない顔に戻って佐久間さんの元へ歩いていった。仁王君は私を見るやいなや手をひっぱって教室を出た。一週間も休んだのにLHもサボってもいいんだろうか。そう思っているといつの間にか屋上についていた。

「みょうじ…俺のせいで…すまんかった」

『ううん、仁王君のせいじゃないよ。むしろ私のせいでごめんね。その傷私のせいだよね…』


仁王の口元には痛々しい傷があった。私のことが原因でブン太と仁王君で殴り合いになったらしい。休んでいる間、クラスメートの子がメールで教えてくれた。

「このぐらいなんともなか。俺はみょうじのほうが心配じゃ」

『ありがとう、私は大丈夫だよ』

にこっと笑ったつもりなのに仁王君は私を見て顔を歪ませて微笑んだ。

「少し、痩せたのう…」

『…っ、そうかな?』

確かにずっと食べ物が咽を通らなかったので5kgほど痩せた。仁王君はよく見てるね。そう言うと仁王君は切ない表情をして笑った。





それから二人で教室に戻った。先生からは体調を聞かれ、その後LHをサボったことで少し怒られた。いつも通りの学校だ。授業は一週間分も遅れているため、ついていくのがやっとだったけど、何かに集中している間はブン太の事が忘れられた。

でもやっぱり元彼と同じクラスなのは正直辛い。自然とブン太と佐久間さんが仲良くやっているのが見えてしまうから。休み時間になると急いでトイレに駆け込んだ。もう枯れてしまったと思った涙は案外簡単に流れ出た。ああ、やっぱり私はまだブン太が好きなんだ。しみじみとそう思った。











立海に来てから3度目の春が来た。私は3年C組となり、ブン太と別れた時以来の幸村君と同じクラスになった。私は何気にテニス部と縁でもあるのだろうか。ブン太と仁王君は再びB組だった。隣のクラスだけど、ブン太と同じクラスじゃなくて良かったとホッとした。ブン太は私と別れてから女の子を取っ替え引っ替えしていると聞いた。ブン太を見るだけで胸が痛い。そんな私には、このクラス替えは好都合だった。






誰もいない放課後にふと窓を見た。満開の桜びらが風に舞っている。そんな中、私の机に一枚の花びらが舞い降りた。



《桜を見ると桜餅を思いだすよなー》

《もう、ブン太は典型的な花より団子だよね》

《うるせー!だいたい外国では桜は果樹として重視されてんだぜぃ》

《へぇー、日本人は花見とか見ることが好きなのにね。そういえばどこの学校にも桜って植えられてるのは何でだろう?》

《あー…なんか人生の転機を彩る花になってるらしいぜぃ》

《人生の…転機…》

《確かに桜は人生の転機を彩るのかもな》

《どうして?》

《どうしてだと思う?》

《えー!質問返しとかナシだってー!》

《じゃあちょっと耳貸して》








《桜の下にいるなまえに一目惚れしたから》






ぽろぽろと涙がこぼれる。一年前の事を思い出すなんて。桜は人生の転機を彩る花。そう教えてくれたのはブン太だった。もしかしたら、今ちょうど私は変わるべき時期にいるのではないか。いつまでも女々しくブン太を思ってちゃ駄目だよね。これからは強く生きて行こう。ブン太と付き合った事が後悔に変わらないように。

春は出会いと別れの季節なのだ。