こんなに早く再会するなんて!


『嘘でしょ…』

「…何?そんなに見つめられると集中出来ないんだけど」





………



神様は私の事が嫌いなのでしょうか。うん、嫌いなんだよね、嫌いじゃないと昨日誤って一夜を過ごした男と講義で隣の席になんてしないもんね!


ぶっちゃけ、同じ学部っていうのは知っていた。だって彼が教室に入ってくる度に女の子の黄色い歓声がけたたましく響き渡るんだからそりゃあ嫌でも同じ学部なんだって分かるでしょ。でも今まで講義がかぶったとしても席は離れていたし、対して意識することもなかったから今まで接点がなかった。なのに何故今更。なかった事にしようって言ったよね?何故に隣。さっきから幸村君と隣の席だからか知らないけど女子の視線が痛い。ああ、隣に座るだけでもこんなに敵視されるのだから、一夜を共にしたとバレたら今頃どうなっていたんだろう。苛立ちを隠せず手に持っていたオレンジのボールペンがふるふると震える。


『昨日の今日でよく何もなかったかのように話しかけれるのね』

我慢出来ずに嫌味を含めて言った。あ、もちろん講義中なので小声で。すると幸村君は不思議そうに私の顔を見た。

「何か問題でもあるのかな?同じ学部なんだし話してもおかしくないだろう?」

『っ!でもなかったことにするって言ったら普通隣に座る?』

座らないよね?普通だったらちょっと距離を置いて離れた場所に座るよね?

「なかったことにするなら、俺が隣に座ってきても平然とするべきだと思うけど?」


じゃあ幸村君は私が平然としてられるか確かめる為にわざわざ隣に座ってきたっていう事?試されてたってわけ?はぁぁぁぁ?!


「君からもう関わるなって言ってきたくせにね。そんなに俺の事が気になる?」


な、なんなのこの人!やっぱり普通の人じゃない!無神経にも程がある。普通自分で俺の事気になる?とか言っちゃう?ありえないんだけど!どんだけ自分に自信があるのよ!そりゃあ顔はかっこいいけれども(不覚にももろタイプ)!体も余分な肉とかなくて見かけによらず筋肉質で理想的だったけれども!




性格にかなり難あり!




大好きな教授が講義しているけど、私は寝る事にした。これ以上幸村君に構っていると爆発しちゃいそう。悔しいけれど、私は幸村君に言い返す事が出来るほど頭はよろしくない。全部感情任せになって、周りが見えなくなる。それだけは避けたくて、何も考える事のない寝るという手段に出た。笹川教授、ごめんなさい。後でレポートでも何でもするから、今だけはこの場を凌がせてください。


私は幸村君から出来るだけ距離をとり、幸村君と反対方向に顔を傾けて机にうなだれた。いきなり寝るなんて、どういうつもり?なんて声が聞こえなかった気もしないけれど全部無視。寝付きがいい私は、そのまま私は意識を手放した。



That's enough.
(もうたくさん。)


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