理屈どおりにはいかないわ


恋愛を長続きさせる方法。それは好きって気持ちだけじゃ長続きしない。やっぱりさ、お互いを知っていきながら、ありのままの姿をさらけ出す事だと思うの。よく携帯小説の中で嫌われるのが怖くてお互いの気持ちを言えずに少しずつすれ違っていくとかあるじゃない?ああいうのすごくもどかしくない?お互いどう考えても好きでしょって分かってるのに変な所ですれ違っちゃうから見てらんないの!私はああいう風にはなりたくない。大体自分の思ってる事を言えない関係なんて堅苦しいだけじゃん。何の為の彼氏よ。私は思ってる事は全部言ってた。それなのに………










『なんで私が振られなきゃいけないのよぼけぇぇぇえ!』

「とりあえず落ち着けば?」


空のジョッキを勢いよく机に叩きつけた私を呆れた表情で見つめているのは私の親友もとい長谷川香織。中学からの腐れ縁。サバサバしてて美人で恋愛経験が豊富な香織はかなりモテるが、かなりの毒舌。ちなみに年下の彼氏持ち。そんな香織は告白してくる男を得意の毒舌でばっさばさ振るという見事な悪女でもある。


『私、なんて振られたと思う?』

「"重い"でしょ?」


さすが腐れ縁、よく分かっていらっしゃる。大正解です香織さん。


「だって毎日メールは当たり前、電話は5コール以内に出る、揚げ句の果てには相手が風呂に入ってる間に携帯チェックだなんて重い以外に何て表現すればいいのよ」

『違う!私にピッタリの人がまだ現れてないだけよ、運命の赤い糸の相手!』

「はあ?あんた二十歳にもなってそんな事言ってんの?ナンセンスだわ。あんたシンデレラコンプレックス?」

『違うから!』

「大体ね、自分の事ばっかり言ってるんじゃすれ違いどころかうざったく思われるだけよ。それにメールとか電話とか全部携帯任せじゃない。使うんなら電話かメールのどちらかにしなさいよ。相手のプライベートの事何も考えてないでしょ。なまえには必要ないのかもしれないけど、大抵の人は自分の時間っていうのが必要なのよ。自己主張ばっかりしてないで相手の気持ちも考えなさい」

はぁぁ?と言い返したいところだが、悲しきかな。香織の言う事はかなり正論で言い返せなかった。というのも、これでフラれるのはもう7回目。最初の頃は、私のありのままを受け入れてくれない、この人とは合わないんだ、じゃあさよならと案外簡単に割り切っていた。しかしさすがに毎回毎回「重い」「疲れる」「面倒臭い」との理由でフラれ続け、耳にたこができるほど香織から同じような事を聞かされたとなると、私も結構堪える。


『でもさ、私は本気で好きだったんだもん。好きだから今どこにいるか、誰といるかいつも気になっちゃう。これっていけないことなの?』

今まで眉を吊り上げて怒りながら説教をしていた香織が、少し心配そうな表情に変わった。

「別にその感情は悪い事じゃないわ。誰にも嫉妬の念はあるし、私だって彼氏を束縛したい事だってある。ただ、人を束縛するには限度があるの。なまえは少し相手を縛りすぎてるのよ」

『そんなの…わかんない』

フラれた時に全部出しきったと思った涙が再び滝のように流れた。この時私は悟った。涙は絶対に枯れない、と。そんな私を見て香織はあーもう泣かないの!と綺麗な花柄のハンカチを貸してくれた。ああもう!いつも毒舌なのにたまーに優しくしてくれるんだから!余計涙腺が緩むじゃないの!












『よし決めた!』

10分後、沢山泣いて妙にスッキリした私は席を立ち上がった。

『やっぱもっといい男探すわ!』

「はぁぁぁぁぁぁああ!?さっきあれ程忠告したじゃない!こればかりはあんたが直さないと…」

『だって世の中にはまだまだ沢山の男がいるじゃない!私が知ってるのはまだ7人だよ?自分に合う男を定めるには早すぎるじゃん!逆にこんなに早く見つかったらそりゃあ神様からのプレゼントものだよ。そもそも私達まだ大学生で二十歳だし人生これからじゃん!』

おかわりしたビールを流し込んで言い切ってやった。どうよ!とドヤ顔をする私に香織は呆れ果てて勝手にしろと携帯をいじりだした。


『あんな男、すぐ忘れてやるわ!あ、おじさん生おかわりー!』


嫌な事は飲み明かして忘れるのが一番よね!



「(なまえのポジティブシンキングは何処からくるのかしら…)」




Worrying about it won't solve anything.

(くよくよしてもしょうがないわ)


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