テニスは俺の人生を180度変えてくれた。でも自らテニスを選んだわけじゃない。ただ、近所に住むお兄さんがテニススクールのインストラクタをしていて、誘われたからやってみただけというなんとも不純な理由だ。それでも始めてみればいっきにテニスの魅力に引き攣られていた。毎日毎日飽きずにボールを追って、いっぱい転んで、いっぱい怪我して…でも泣かなかった。俺が涙目になっているといつも真田が

「男が泣くなどたるんどる!」

って喝を入れられていたからね。なまえちゃんが言ってくれた言葉と同じだったから俺はこいつとはやっていけそうだと思ったんだ。今の俺があるのは真田のお陰だと思う。それから俺は虐められなくなったし、学年が上がるにつれて女子からちやほやされるようになった。今までなまえちゃんしか知ってる女の子がいなかったからちょっと嬉しかったけど、やっぱり俺はなまえちゃんが大好きだった。なのに歳を重ねるにつれて俺となまえちゃんが会話する回数が減っていった。今なんて全然喋らない。時々目は合うのだけどすぐ反らされてしまう。どうしてなんだ、俺はただ、君を守りたくて強くなったのに。ただ、君と話がしたいのに。何処で俺達はすれ違ってしまったんだろう。俺はまだ、なまえちゃんのことが好きなのに。

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(20110407)