私と精市は幼なじみだ。私の幼少期は活発でお転婆な女の子だった。それに対して精市は今とは想像出来ないほど引っ込み思案で泣き虫で、それに加えて中性的な容姿だった為、昔からがき大将の男の子に虐められていた。当時、そんな精市を守るのが私の役目だった。だからだろうか、私は精市に物凄く懐かれて、常に私の後ろをついて来たのを覚えている。私はそんな精市をうっとおしく思いつつも、ひそかに愛おしく思っていた。
でも精市はテニスを始めてからどんどん変わっていった。多分真田くんとの出会いが精市を180度変えたのだと思う。おかげでがき大将に虐められる事もなくなったし、泣くこともなくなった。そして私の後ろをついて来る事もなくなった。私に懐いていたのは変わらなかったけど。小学校中学年に上がるころには今のようになっていた。品行方正で頭脳明晰、容姿端麗は昔から。私は精市の劇的な変化についていけなくて次第に精市を避けていった。多分小さな嫉妬。精市の過去を誰よりも知っているから今では立海の有名人となってしまった幼なじみを何処か恨めしく思ってしまうのだろう。

「今月の月刊プロテニス見た!?幸村くんの特集ページ載ってるんだって!」

「えーまじ!?絶対買わなきゃ!」


ああ、また精市が遠くなる。

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(20110324)