むいかめ

我慢が出来なかった。俺はただ自分の本能に任せていただけ。自分にこんなどす黒い感情があるなんてなまえと付き合うまでは全く知らなかった。これも全部なまえのせい。ねえ、どう責任とってくれるの?

事は数十分前、俺はなまえとショッピングセンターへ買い物に来ていた。そこで俺達はしばらく個々で買い物をすることになった。俺は店内のスポーツ用品店でラケットのグリップを見ていた。テニス用品はじっくりと選ぶ俺。だからなのか、やっと会計を済ませて時計を見ると、なまえとの待ち合わせの時間を大幅に過ぎていた。めったに焦らない俺だがこの状況はやばい!急いで待ち合わせ場所へ行くとなまえがすでにいた。

「ごめん、遅くなっ・・・」

だがなまえは偶然会ったであろう彼女と同じクラスの藤井と楽しそうに話し込んでいた。わずか数メートルしか離れていないのに、一気になまえと俺の距離が広がった気がした。せっかく走って来たのになまえは全然俺に気付かない。なまえの目には藤井しか映っていない。嫌だ、止めろ、早く離れろ。感情より体のほうが速かったみたいで、俺はなまえを引っ張って藤井から遠ざけた。

「お前藤井だっけ・・・?俺の彼女と親しくするなんていい度胸だね」

「ゆ、幸村!お、俺はただ偶然・・・」

「うるさいよ。早く行けよ」

藤井は顔を青ざめてそそくさと歩いていった。それでも満足しない俺はなまえの手を引っ張り無理矢理エレベーターの中に押し込んだ。ドアが閉まったと同時になまえに噛み付くように口付ける。なまえは何とかして逃げようとするが、そんな抵抗は無駄。なまえの後頭部を手で抑えて逃げられないようにする。理性が飛んで何も考えられないようにしてやる。いや、俺も何も考えられない。やっとの事で唇を離すとなまえは涙を目にためて俺を睨んでいた。なんだよその目。俺のほうが睨んでやりたいくらいだよ。

「俺以外の奴なんか見るなよ!俺以外の男と喋るな!頼むから・・・俺だけを見てよ・・・」

なんて醜い姿なんだろう。これじゃあ俺の欲望をなまえにぶつけただけじゃないか。ただの八つ当たり。かっこ悪い・・・

しばらく顔を伏せているとなまえが俺の頬に触れてそっと唇に触れた。俺はびっくりして彼女を見つめる。なまえはさっきの怒った表情は全くなく、顔を赤らめて上目遣いで俺を見ていた。

『これで機嫌治った?』

まったく、なまえには適わないよ、降参だ。俺の事ならなんでも分かってるんだね。多分俺を制御できるのはなまえしかいないよ。

もじもじしながらキス
(嫉妬≦君からのキス)

(20110207)