いつかめ
俺の日課の一つには屋上庭園の花壇の水やりがある。例え夏休みであろうが関係ない、毎日欠かさずに水を与える。例えどんなに小さな花でも、人間と同等の価値の生命が宿っているのだ。そんな花達をこの灼熱の太陽によって枯らされていくのを黙って見ていることができようか。俺が入院中の時はなまえか蓮二か柳生かジャッカルに水やりを頼んだものだ。真田は勢いで水をやり過ぎてしまう可能性があるから駄目。仁王やブン太や赤也は絶対サボる。一応この学校には園芸部というものが存在するらしいけど、ただ部活をやりたくない奴等の集まりらしいから当てには出来なかった。その反面彼等意外はしっかりしているから安心して任せる事が出来た。なまえは今でも花達の様子を見に来てくれる。自分の趣味を理解してくれるのはやはり嬉しい。今日も生き生きとしている花に囲まれながらなまえの事を考えていると自然と頬が緩んだ。水やりが一段落して近くにあるベンチに腰掛けて目を閉じる。ああ、やっぱり暑いな。ガンガンと容赦なく照り付ける太陽は俺の体力を次第に消耗していく。テニスで暑さは慣れているけど今年の暑さは桁違いだ。そう考えていると、まるで霧吹きをかけられたようなひんやりした感覚がして勢いよく目を開けた。目の前には俺がいつも水やりで使っているホースを持ったなまえが立っていた。どう?驚いたでしょ!と楽しそうに笑うなまえ。フフ、よくもやってくれたね。俺はなまえからホースを奪ってなまえに焦点を当てる。なまえはきゃーきゃーと叫びながら走り回っていた。どのくらいたっただろうか。気がつけば俺もなまえもびしょ濡れだった。まさかこの年で水の掛け合いをするなんて…俺はつい可笑しくなってハハハッと声をあげて笑った。さっきの暑さは全く感じない。シャツが濡れていて気持ちいいくらいだ。馬鹿みたいだけど…なまえとならいつだって楽しい。そんな俺を見てなまえもつられて笑っていた。周りには大好きな花、そして隣には大好きな彼女。幸せを感じた瞬間だった。


まるで子どもみたいに
君が笑うから幸せなんだ


(君のシャツが透けていてドキドキしちゃったよ)

(20110130)