ふつかめ

まったく、俺も風邪を引くなんて自棄が回ったな。夏風邪って長引くから嫌なのに。昨日の花火大会でちょっとはしゃぎすぎたかな?だって浴衣姿のなまえがあまりにも可愛かったんだもん。仕方ないじゃないか。ごほっごほっ。うーやっぱり風邪は辛い。なんだかこうして寝ていると入院していた頃を思い出す。あんなのもう思い出したくもない。思い通りに身体を動かせない、大好きなテニスも出来ない、おまけに原因不明の病気なんてどれだけ俺を奈落の底に突き落とす気だよ。まあ、それを完治したから今の俺があるんだけどね。それに神は愛した人にしか試練を与えないらしいし。つまり俺は神に愛された子、まさに神の子だ!…なんか俺ほんとに風邪のせいで頭おかしくなったんじゃないか?しばらく寝ることにしよう。あぁ、なまえに会いたい……

…ん?今何時だ?結構寝てたみたい。安静にしていたおかげでさっきよりは身体も楽になった。俺はむくっと身体を起こすと、ベッドの側にはなまえがすやすやと寝息をたてて寝ていた。ちょっ、なんでなまえがいるんだ?いや、死ぬほど嬉しいけどね。ベッドの隣の棚を見ると、なまえが作ってくれたであろうお粥と、封の開いた薬と水がおいてあった。そして寝る前まではしてなかった冷えピタまで俺のおでこに貼付けてある。これ全部なまえがやってくれたのかな?父さんは今出張中だし、母さんと妹は女だけで旅行に行ってるし(なんで俺が留守番しなきゃならないんだよまったく)。そして俺にはある疑問が浮かんだ。薬の封が開いていたけど、俺は薬を飲んだのだろうか…否、そんな記憶はない。となるとフフフ、なまえだね。ほんと可愛いことしてくれちゃって。唇をなめればほんのりとなまえが毎日塗っているイチゴのリップクリームの味。俺はなまえの頬にそっと口づけをした。看病してくれてありがとう。

ぶきっちょなやさしさ
(口移しとは大胆だね)


(20110117)
補足!ヒロインちゃんが看病しに来たのは精市くんが無意識にヒロインちゃんに電話したからです。