今思い返せば、いつも俺がくじけそうな時はいつもなまえがいてくれた。


***


くそっ!なんなんだあの三強とか呼ばれてる奴ら!2年のくせに3年より強いなんて聞いたことねぇ。俺は全国No.1の立海大附属中に入ってNo.1になるって決めたのに…真田とか言う老け顔の先輩にこてんぱにやられた。俺は悔しくて悔しくて無我夢中で走った。目にはうっすらと涙。やべっ視界が霞む。そう思ったら案の定こけてしまった。いってぇ…膝も腕も足も…心も…何もかもいてぇ。危うくテニスを嫌いになりかけたその時、真新しい制服を着た一人の女子が俺の前にしゃがみこんできた。

「ねぇ、そんな所で寝そべってると風邪引くよ」

俺は涙を見せたくなくて顔をふせたまま何も答えない。

「ねぇ、ねぇってば。もしもーし」

俺が反応を示さないのを不思議に思ってか、その女は何度も話し掛けてくる。くそっ!うぜえ女だな。

「なんだよ!うっせえな!」

「あ、起きた」

「俺に構うな!」

「はいはい、これで涙と膝からでてる血ふきなよ」

「えっ?」

「何があったかは知らないけどさ、男が簡単に泣かないの。」

なんかケチつけられて何処かへ行ってしまうと思ったのにその女はハンカチを差し出してきたから拍子抜けしてしまった。

「…わりぃ」

「いいっていいって」

「これ、洗って返す」

「いーや、可哀相な君にプレゼントするよ」

「なんだと!」

じゃあもう行くねーとひらひらと手を振ってくる。なんなんだあの女。

「あ、そうだ」

何か思い出したようにその女は振り返る。

「テニス、嫌いになっちゃ駄目だよ」

またね、ワカメ少年と言い残してスタスタと行ってしまった。


なんだよあいつ。何があったか知らないって言ってたくせに…実は見てたんじゃねーか、俺の試合。あいつがくれたピンクのハンカチを見つめる。心臓の鼓動が早くなるのを感じた。


これが俺となまえとの最初の出会い

(あ、なまえじゃないか)(精ちゃん、やっほー)(入学おめでとう)(ありがと!あ、さっき面白い男の子に会ったんだー)(どんな子だい?)(ワカメみたいな髪の毛をした男の子)((ワカメ…あぁ)ふふ、面白くなりそうだ)(え?)

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(20110102)


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