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「なあ、」
『なーに?』
俺が呼びかけるとなまえは首を傾げて俺の目をじっと見つめてくる。やべっ…可愛い……じゃなくて、
「お前いい匂いする。菓子持ってるんなら俺にもよこせ」
『持ってないよ』
…は?いやいや、そんなはずはない。俺はお菓子や甘い物が大好きな所謂甘党ってやつだ。こういう匂いには敏感に決まってるだろぃ。さっきから隣を歩くなまえからはほのかに甘くてフルーティーな香りがする。しかも何処かで嗅いだことがあるような、俺の知っている香り。ほら、また。綺麗な色素の薄いストレートの髪が左右に揺れる度に香る甘い匂い。
「やっぱりなんか食ってんだろぃ!」
『だから食べてないってば!』
「嘘だ、さっきからすっげー甘い匂いすんだよ、何か食ってんじゃねーの?」
そう言うとなまえはクスクスと笑った。
『これは香水だよ』
そう言ってスクールバッグから小さな小瓶を取り出してきた。キャンディの形をした淡いピンクの小瓶からはさっき嗅いだ香りよりも少しきつい香りがした。
「お前いつもつけてたっけ?」
『今日は特別』
そう言って笑うなまえはいつもと違ってなんだかすっげえ色っぽい。香水をつけているのも一理あると思うけど…あ、そうか、こいつ化粧してるんだ。いつもしないくせに。
「…なんかムカつく」
え?ときょとんとした顔にほんのりピンクのチークがのってるから、フェロモンが増してるみたいで俺の心臓の鼓動は加速する一方だ。自分だけどきどきしてるみたいでムカついたから俺は思いっきり唇を塞いだ。時々漏らす彼女の色っぽい声にさらに加速する俺の心臓。ほんと今日のこいつには調子狂うわ。
俺が満足したところで唇を離すと目の前のなまえはさっきよりも顔を赤らめて肩で息をしながら俺を見上げていた。こういう仕草で男を誘ってるってこと、少しは自覚して欲しいよなぁなんて思いながら綺麗な髪を触った。またふわっと香る甘い匂い。もしかしてこの香り…
「グリーンアップル…」
「当たり!」
よく分かったねと俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。なんで今まで気づかなかったんだろう。授業中でも、部活中でも、なまえといるときでも噛んでるガムの匂いとそっくりだという事を。
『グリーンアップルをベースにいろんな香りをちょっとずつ調合してもらったんだ。私の色違いでもう一つ水色の小瓶、これはブン太にあげるね、ブン太と私だけの香水だよ』
やべえ、と俺は思った。さっきのとは比べものにならないほど心臓が跳びはねた。鼓動が早過ぎて、血液の循環が加速されて、俺の顔が髪の色と同化しちまいそうだ。俺は本能の従うがままなまえをぎゅっと強く抱きしめる。ほんとなんでこんな可愛いんだよぃ。好きが大きすぎて壊れちまいそうだ。いつもふわふわした甘い雰囲気、でも時々放つ刺激的で溶けそうになっちまう仕草をするなまえ。それはまるでキャンディの甘さとほっぺが落ちそうになる感覚。
『誕生日おめでとう、ブン太』
あぁ、ほんとに
だいすきさ
僕のキャンディ
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Happy birthday!
Bunta Marui*
この作品はひゃわ様主催のりんごほっぺ様に提出させていただきました。このような素晴らしい企画に参加させていただき、ありがとうございました!
(20110420)