「おめでとうなまえ!」

「なまえ先輩おめでとうっス!」

「精市もおめでとう」

「二人共お幸せになー!」


今日は立海元レギュラーメンバーで元マネージャーのなまえと元部長の幸村の結婚祝いとして真田の家で祝杯をあげている。中学生だった俺達もすっかり成人を迎えてみんなで酒を飲み明かす。あの頃はファミレスのドリンクバーばかり飲んでいたのに。月日の流れは早いものだ。


「仁王は祝ってくれないのかい?」

縁側で一人酒を飲む俺に不思議がった幸村は話しかけてきた。

「なんでもなかよ。結婚おめでとう。幸せになりんしゃい」

そういうと幸村は安心したように笑ってありがとうと返してみんなの輪に戻って行った。

(幸せになれ…か)

俺はちゃんと笑えていたのだろうか。正直おめでとうなんて心の底からはこれっぽっちも思っていない。だって俺はまだなまえが好きだから。


俺となまえは生まれた時から一緒だった。所謂幼なじみ。小さい時はなまえと大きくなったら結婚しようと約束もしたけど、なまえはきっと覚えてはいないだろう。何処へ行くのも一緒で、あいつがいることが当然だった。俺がテニスをするために立海大附属中を受験すると告げるとなまえは嫌!まさと一緒な学校受ける!と言って一緒な中学に入学したのにな。しかしそこで俺となまえの関係は途切れた。なまえと幸村が付き合い始めたからだ。二人はマネージャーと部員として知り合った。そしてなまえをテニス部のマネージャーに勧めたのは俺。二人を結び付けたのはこの俺。


『まーさ!』

俺の気持ちを全然知らないなまえは嬉しそうに近づいてきた。

『こんな所で一人で何してるのさ』

「風に当たりたいだけじゃ。少し飲み過ぎたみたいじゃからのう」

『風邪引かないでね』

引くわけないじゃろ。これでも鍛えてたんじゃから。

『なんか二人でいるのって久しぶりだね。子供の頃に戻ったみたい!』

それは俺の気持ちを分かってて言っとるんか。まあなまえに限ってそんなことはないか。

「俺と二人でいてええんか?さっきからお前の旦那が物凄く睨んでくるじゃけど。俺の命が危ないけぇ早く戻りんしゃい」

なまえは慌てて幸村の元へ走っていく。そう、これでええんじゃ。これで…

見上げた月が少しぼやけて見える。俺は綺麗なウエディングドレスを着て幸せそうに笑うなまえをちゃんと見送ることが出来るのだろうか。

(どうしてお前さんを好きになったんじゃろうな)

でも俺はお前が笑顔でいられるならそれでいいと思うとる。お前が幸せならそれでいいんじゃ。お前が永遠に幸せであることをただ願うだけ。


例えそれがどんなに寂しく、辛くても…


「幸せになりんしゃい」


涙を拭いながらもう一度月を仰いだ。



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東方神起
『どうして君を好きになってしまったんだろう?』
から考えたお話です。
最近切ない話ばかり
浮かんでくる苦笑

(20110205)
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