お腹の音で目が覚めた。今日から新年の幕開けだ。お雑煮作ってあるかな〜なんてるんるん気分でリビングに行くと…



「あけましておめでとう」




ニコニコしながらこたつの中に入ってみかんを食べている精市の姿があった。





え?なんでいるのなんでなんで?おかしくない?てか思いっきり上下色違いのスウェットに寝癖つき放題のボサボサな姿見られてるんですけど。え、まだ年明けたばかりなのに何この仕打ち。


「あら、なまえ起きるの遅いじゃない!精市くんずっとあんたが起きてくるの待ってたのよ?今日は一緒に初詣に行くんでしょ?まったくあんたって子は…あ、良かったら精市くんも私のお雑煮食べて行って!」


ではお言葉に甘えてと甘いマスクで対応する精市に母はメロメロ。てか初詣行くなんて聞いてないんですけど。


『ちょっと精市!一緒に初詣に行くなんて約束したっけ?』

「あけおめメールに書いてあっただろ、よく見てみなよ」


私はスウェットのポケットから携帯を取り出して精市からのメールを開く。ずっとスクロールしていくと
《一緒に初詣行かない?今日の午前9時になまえの家に迎えに行くから準備して待ってて》
という文章が目に入った。

『なんでこんな分かりにくく書くの!もっと分かりやすく書いてよ!』

「彼氏様からのメールなんだから最後の最後まで見るのが常識だと思うけど?」


くっそー私を試したのか。腹黒い奴め「何か言った?」『いいえ何も』


まあこうなるのは想定内だったけどねと溜め息をはく精市。そんなんなら最初から分かりやすく書けっての!うわっめっちゃ睨まれた。怖いよーしくしく。


そんなやり取りをしてるうちにお雑煮が出来たみたいで、私と精市は並んでお雑煮を食べている。んん、美味しい。精市なんかこのお雑煮すごく美味しいですね、何のダシを使っているんですか?と母にダシの事まで聞いている。母は嬉しそうに精市にいろいろ教えこんでいた。ここは料理教室か。


「あ、今更だけど早く着替えて髪もちゃんと結ってきなよ、見苦しいから。」





神様、新年からこんな扱いって有りですか?



***


「じゃ、行こうか」


こうやって精市と何処かへ出かけるのは久しぶりな気がする。精市は部活を引退したとは言え、身体が鈍るのは良くないからと今でも後輩の指導と言う理由で部活に参加しているのだ。相変わらず彼らに休みはなく、正月がやっと羽を伸ばせる機会と言ったところか。

憎まれ口を叩かれてもやっぱり私は精市が好きなわけで。久しぶりのデートに胸が高まってついつい繋いだ手をきつく握ってしまう。そんな私を見て精市も握り返してくれた。あ、今きゅんときた。


「おみくじをひこうか」

精市の提案により私達はおみくじをひく。

「俺は大吉だ。なまえはどうだった?」

『げっ』

まさか凶をひくとはこれっぽっちも思っていなかった私。凶となると私の一年そのものを否定された気分になる。あー泣きそう。そんな私を見て苦笑しながら精市は頭をよしよしと撫でてくれる。なんだかそれだけでご利益がある気がする。だって神の子だもんね、あれ、違うか。


「そんなに落ち込まないの。おみくじっていうのは自分の都合のいい解釈をすればいいんだ。凶でも努力すれば運を上げることができる。逆に俺の場合は大吉だからこれ以上運は上がらない。逆に下がることだってある。まあ俺は運を下げさせないけどね、フフッ」


最後のほうは聞かなかった事にする。




「まあ…俺の隣にいればなまえは大丈夫だよ。俺が一生お前を幸せにしてあげる」



いつもの綺麗な笑みではなく真剣な表情での告白。ねぇ、私自惚れてもいいかな?


さ、お参りに行こうかと手をひかれる。願い事はただ一つ。






(ずっとあなたの隣にいられますように)
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A Happy New Year!

(20110101)
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