*ピヨ毛姐さんに捧げるディーノさんとスワイプくんのお話
*友情だよ










夜の入りはいつだって物悲しい。
そこにあったはずの温もりが、徐々に失われていく。
どうして消えてしまうんだ、どうして俺を遺していくんだ。
そんな風に、思ってしまう。

「寒いな」
「ああ」
「酒でも飲むか?」
「遠慮する。そういう気分じゃねぇ」

いつだって隣に居て、それが当たり前だと思っていた。
だが戦士として生きるということは、そんな当たり前を粉々に打ち砕くばかりだ。
納得していたはずだった。
喪失することに。

「…そろそろだったな」
「気付いていたのか、意外だな」
「馬鹿言え、どれくらい一緒に居ると思っている」

抱えた傷の重さに倒れ込みそうになるときもある。
そうならないのは、なんだかんだで付き合いが長いからで。
きっと、最後の砦に近いものをお互いに感じているからだろう。
友人で、戦友で、同期で、二人してスパークにとって一番大切なところを占めるものを亡くしている。

「……後悔してばかりだ」
「そうかもな」
「だが、立ち止まってもいられない」
「ああ」
「俺が居る限り、あいつは、」

生きている。
声もなく呟いた。
どんなことがあっても、俺はあいつを忘れない。
まだ、あいつのいる所には行けない。
そこに行くときがあるならば、それはこの星に真の平和が訪れるその時だ。
俺たちのような、戦闘特化が生み出されないような、そんな時代に。

「俺さぁ」
「なんだ」
「久しぶりにサニーの夢を見たんだよ、夢自体ほとんど見たことねぇのに」
「…ふうん」

サイドスワイプのただでさえ男ぶりの良い顔が、だらしなく緩んでいた。

「楽しかった」
「そりゃ、良かったな」
「まあな。お前は?」

嫌味な笑顔だ、殴りてえ。

「知るか」
「くくっ、照れるなよ」
「誰が」

共に、忘れ得ぬ存在がある。
それが今の自分のを作っている。
いと、しい、と、素直に思えるその存在を。

「次に会えたら、いっぱい抱きしめてやるんだ」
「ふぅん…」
「お前もしてやれよ、あいつ絶対喜ぶぜ」
「抜かしやがれ」

けらけらと笑う色男に、少しばかり苛つく。
お前の兄弟とあいつを一緒にすんじゃねぇ。

「…早いな」
「…そうだな」

夜の闇が迫ってくる。
冷気と静寂を従者にして。

「後悔しないように生きてみたいけど、きっと無理だわ」
「だろうな」

風が吹き抜けた。
金属の体をすり抜けて、夜の向こうに流れていく。

「でもよぉ」
「あ?」

単純な後悔なら何度もした。
掬えなかった命に、身が張り裂けんばかりの日もあった。
それが全てではないことなんて百も承知で、だけど戦士としての理想を追い求めていたかった。

「お前やアーシー、ロディマスに出会えて良かった」

そう言ってほほ笑むサイドスワイプに。
一瞬だけ、ハウンドが被って。

「…俺もだよ」

柄にもなく、泣きそうになる。


そう、きっと。
こんな感傷は命日だから。
だから、今この日だけは。
泣かせてくれないか、愛しい友人よ。
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