風を切る音は、何度聞いたって心が弾む。白い航空機に誘われた空の散歩は、思っていたより愉快だった。特に、地上でこちらを睨みつけていた単眼ガリを思い出すと。「良い風ですねぇ」「違いねェ」くるりと旋回すれば、全く速度を落とさず付いてくる白いお嬢。「負けませんよ!」ああ、昔みたいだ。

≪番外編その1:イケメンと白天使≫


例えば、抜けるような青空のもと、楽しそうに笑っている姿だとか。俺がそこへ行ったときに、早すぎるよ、と怒っている姿だとか。よく頑張ったね、格好良かったよ、と微笑んでくれる姿だとか。合わせた拳の熱さだとか。懐かしいあいつの好きだったオイルの匂いだとか。そういうものをただ、夢見ていた。

≪番外編その2:赤いディフェンサーとその友人の記憶≫


カクテルみたいな雨が降る。それがどこから垂れてるかなんて考えたくないし知りたくない。これじゃ私が弱い子みたい。強くならなきゃ。私は、強くならなきゃいけないの。でも、でも。もう震える肩を抱いてくれる手も、爪もない。青くても赤くてもいいから、それは貴方だから。貴方が恋しいと雨が降る。

≪番外編その3:ガリを想う白天使≫


赤の飴玉を含む。甘い味を楽しもう、とするけれど。何も感じなかった。水色の飴玉を握り締める。おいらと同じ色。赤の飴玉を舐める。あいつと同じ色。こんな少しの差で、おいら達は別れてしまう。「寂しいなぁ」ぎち、力を込めた手の中で、飴玉が割れた。傷付き流れるエネルゴン。滲むピンクは同じはず

≪番外編その4:ビーと飴玉≫


遥か昔のことだけど。私はしっかり覚えてる。あの時の貴方の言葉も。あの時の貴方の表情も。あの時の貴方の、震えている姿も。大丈夫。私が貴方を嫌うはずないわ。だって私は貴方の妻になる女よ。貴方の子供の母になる女よ。ねえ、ショック。私は貴方に出会えて、昔も、今も。とっても、とっても幸せ。

君が羽ばたいて空に消える夢を見た。それは恐ろしいほどリアルで、私の目覚めは最悪のものとなる。這い出たベッドから君の待つダイニングまでの距離が遠い。「あらショック、ひどい顔色よ。大丈夫?」麗しい白の翼を空になどやってたまるものか。抱きしめた温度こそ、現実でいい。「甘えんぼさんね」

≪番外編その5:白天使とガリ≫


手を離せなければ良かった、と、何かの折に、思うことがある。それは二人で見た夕焼けだとか、あいつの好きだったオイルの瓶だとか、そういうのを見たときに。なぁ、俺、寂しいよ。一人きりなんだ、って悲劇ぶりたくなるほどに。でもそういう時に限って勇気をくれるのは、やっぱりお前のパーツなんだ。

≪番外編その6:双子の遺された片割れさん≫

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