私にとって、トランスフォーマーはパンドラの箱だった。

昔から想像力と好奇心の強い子供でね。
自分の作りたいものを作りたいように作る。
そういうことの大好きな子供だったんだ。
だが生憎、世界の真理を読み解けるほどの頭脳は持っていなかった、いや残念。
その代わり、商才はあった。
私は私の限界の知識と商才を武器に会社を興し、自らの有り余る想像力を実現させようとしたんだ。
それが今のKSIの原点だよ。

「あ、お嬢さんスープのおかわりは頂けるかね?」
「もちろん!まだまだあるから、たっくさん食べてね!」
「ありがとう。いやー、娘とはいいものだね」
「…で、それがトランスフォーマーとどう繋がるんだ?」

ああ、そうそう。
商売も軌道に乗り始めたとき、彼らが地球に現れた。
いや驚いたね。
未知のテクノロジーが、突如眼前に現れたんだ。
何故金属が自在に動くのか?
何故ロボットが他の機械に変貌するのか?
原理は?
構造は?
何故?
…そう、彼らは私にとって、異星人というよりも、新しい玩具みたいな存在だったんだよ。
それからシカゴの大戦が起きて、アッティンジャーと出会った。
そして、彼は私に取引を持ちかけた。
トランスフォーマーを研究しないか、とね。
飛びついたよ。
そりゃあ飛びつくだろう?
遊び道具を与えられた子供と同じさ。
君もそうだったんだろう。
楽しい楽しい時間だったよ。
…今思えば、間違いの始まりでもあるがね。

「…ガルヴァトロンか」
「そうだ、まさしく彼だ。私は何も知らされていなかった。この世界のテクノロジーは彼の前身――メガトロンから得られていたこととかね。彼の得意である大胆かつ巧妙な手口も」

そういう訳で、私は彼を造り出してしまった。
正にパンドラの箱だったんだよ。
箱の中から聞こえるガルヴァトロンの呼び声を、私はテクノロジーの進歩の声だと思ってしまったんだ。
より画期的に。
より快適に。
より未来に。
そう思って開けた箱から飛び出して来たのは、多くの暴虐と破壊だった。
私はなんてものを造り出してしまったのだろう。
なんてものを望んでしまったのだろう。
香港での戦闘中、そんなことばかりを考えていたよ。

「…肉が冷めるぞ」
「おや、本当だ。すまないね」
「このソースほんとに美味しい!どこで買ってきたの?」
「蘇の里帰り時の土産さ。ピリ辛なのがいいだろう」
「へー!あとでお礼言っておいてね!」
「承ったよ、お嬢さん」
「…続き」

ああ、すまない。
だが、パンドラの箱には最後、尊いものが残されているものだ。
希望だ。
私の希望は、オートボットと、君達家族だったんだよ。
あの戦闘がなければ、私はずっと誤解したままだっただろう。
トランスフォーマーとは何か。
テクノロジーとは何か。
彼らは玩具などではなかった。
人格を持ち、自由意思を持った、私達と同じ生命体だったんだ。
私はそれにあの時まで気付けなかった。
何とも罪深いことだよ。
どれほどの命を無下にしてきたのだろう、とね。
だから私は君達を援助することに決めたのさ。
せめてもの罪滅ぼしと、恩返しに。
オートボットも君達も、私の命の恩人だから。

「だからケイド、君は我が社の特別研究員になったので月に一度は本社に来い」
「……はあ!?」
「給料は弾むぞ。君の頭脳は使わないと勿体ない!」
「こっからシカゴまでどれくらいかかると思ってんだ!」
「セスナを出そうか?」
「…そこまでしなくてもいい」
「パパったら大出世じゃない!友達にも自慢できるわ!」
「テ、テッサがそう言うなら…」
「ちょろいな君は」
「うるせー!」

ああ、本当に。
希望が君達で良かったよ。




「大体、何で俺ん家に飯食いに来てるんだお前は。どんな高級料理だって食べ放題だろ」
「どれ程潤沢な食材を使った高級料理に食べ慣れても、時として心が求めるのは家庭料理だったりするんだよ」
「へー、金持ちは分からんな」
「(家庭が羨ましいなんて、素直に言えるわけないだろう)」
2014/09/21
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