*友人からのお題「ハウンドとスチールジョー」
*無茶振りじゃね?






見慣れた景色の中に、異質がある。

「Let's jump! …ok,GOODBOY!」

ケイド・イェーガーの私有地で繰り広げられている光景に、その持ち主であるケイドは、面食らっていた。
彼の友人たるトランスフォーマーたちが、それぞれ友好的な野生動物…もといダイナボットと戯れていることには、最近ようやく慣れた。
慣れざるを得なかっただけだが。
だがその友人のトランスフォーマーの中で、ハウンドだけは、特に親しい野生動物はいなかったはずだ。

「おい見てみろよケイド!こいつ結構おりこうさんだぜェ!」

だが、眼前には何がある?
でっぷりとしたお腹には夢が詰まっている我らの頼れるおっさん、ハウンドが戯れている、それ。
愛娘が攫われた先にいた、娘に恐怖を与え更には命を危険に晒した、恐ろしい犬型ロボット。
スチールジョーが、ハウンドと遊んでいた。

「…何をしているんだ?」
「芸を仕込んでるんだ!意外とかわいいなこいつ」
「一つ、聞いてもいいか?」
「なんだ?」
「なぜ、そいつが、ここに、いる?」

ハウンドの大きな手で撫でられ、嬉しそうに尻尾を振る、ケイドと同じくらいの規格をしたロボット犬。
というよりも狼だ。
こわい。
そしてでかい。
こんなもん庭に居られちゃ、テッサのトラウマやら何やらを刺激してしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。

「いやぁ、どうやら香港で生き残ってたらしくてな。ほっといて人間になんぞしでかしたらお前が面倒なことに巻き込まれるかもしれんだろ?だからしょっぴいて来たんだ」
「…あ、そう…俺の為なのか…」

ハウンドの邪気のない笑顔に、先程までの勢いを挫かれるケイド。
スチールジョーは、ぱたぱたと尻尾を振り続けている。

「なぁケイド、こいつ俺が育ててもいいか?立派な番犬にして家族を守ってやるからよ!」
「…番犬なら、猟犬のお前が居るだろ」
「それもそうだな!」

名の通り、イェーガー家の猟犬として申し分のない仕事をしているハウンドは、自覚があるらしくガハハと大笑う。
何かと動物と縁が出来てしまうのは、イェーガーの名のせいか?
ケイドが自らのルーツに思いを馳せ始めたその時、スチールジョーが動いた。
彼の目の前までノシノシと歩いて行く。

「?」

そして、ちょこんとお座りをしてみせる狼型ロボットに、ケイドは頭にハテナを飛ばす。
お行儀よく座るスチールジョーは、どう見てもペットの犬だった。

「ワフゥ!」

元気よく一吠えし、ケイドに対し頭を下げる大きなわんこ。
まるで撫でてくれと言っているようである。
つい、とケイドがハウンドに視線を向けると、ハウンドは大きく頷いた。
それを見て、また、スチールジョーに向き合う。
なるほど、そういうことか。
そろりと手を伸ばし、わんこの頭を撫でる。
トランスフォーマーと同じく金属の体をしているのに、どこか温かく感じるところが、彼らに似ていた。
ふぅ、と溜息。
わくわくと、子供みたいな顔で見てくるわんことハウンド。

「…一匹だけだぞ」
「よっしゃ!よかったなお前!」
「バウ!」

パパは、負けました。

「ちゃんと躾けろよ、ご近所さんに迷惑かけるんじゃないぞ!」
「分かってら!なぁ!」
「バウバウ!」

イェーガー家に新たな住人が増えた、穏やかな午後の話。
2014/08/24
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