こそこそと隠れるように歩く姿に、妙に苛つきを覚えるようになったのは、はたしていつからか。初めは、ただの獲物の一つだった。上海にて最初にぶっ壊した、獲物。余りにもあっけなく終わってしまったソイツ。メモリの隅っこにすぐさま追いやられたそれを、思い出したのは大戦が終わってすぐの頃。オールスパークの恩恵を受け、こちら側もあちら側も復活を果たした機体が何体も居た。ソイツはその内の一つで、何故か俺の近くで生き返った。
 そしてソイツは俺の姿を視認した途端、叫び声を上げ半狂乱になりながら逃げだしたのだ。なんて喧しく、そして腹が立つ行為なのだろう。俺はまた上海の時と同じように追いかけ、制裁してやろうとした。

 それを、あの無駄に大きな機体が邪魔した。俺を追い払うように、聳え立つこちらの司令官よりも大きな機体。泣き叫びながら大きな大きな機体に縋りつき、庇われるソイツ。退け、と凪いだ声でいなされる。嫌だ、とブレードを掲げると情けない声を上げながら獲物は巨大な機体の名を呼ぶ。
 イラつく。ムカつく。お前は俺の獲物だ。俺が壊した。俺がお前のスパークを散らした。俺の物だ。俺の物だ!

 突然、通信が入る。こいつ等と同じように復活した、敬愛する師匠からだった。諸々の整理をしなければいけない為、両軍共に集合することになったらしい。頭上ではデカブツと臆病者も同じように通信を受け取ったらしく、何事かを囁き合っていた。その姿さえも腹立たしいが、今は師匠のもとに向かわなければ。ギュルリと音を立て、指定された格納庫へ向かうべく動き出す。
 ある程度離れたところで、ついと振り向いてみた。あいつ等は俺など初めから居なかったかのように、離れていた時間を埋めるように、寄り添っていた。それがとてもとても憎らしくて、俺は振り切るように走り出した。

 終わりのない鬼ごっこが、始まった瞬間だった。

2013/02/06
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