*ロストエイジネタ





「ガキのお守りは大変だな」

宿営地の夜。
見張り番をかって出たケイドに話しかける、深い緑の巨体。
低い声に、荒々しい顔付きをしている。
昼間、合流してすぐに乱闘を繰り広げていた内の一人だ。

「そうだな。お前もか?」

視線で隣に座るように言ってみると、相手は素直に腰を降ろした。
荒っぽいが、それでも仲間を起こすようなことのない座り方だった。
彼の、生来持っている優しい部分が見えた気がする。
不思議な男だと、ケイドは思った。

「デケェガキが一人と小せぇガキが二人も居たらな。大変だったぞ」
「違いない」

くくく、と二人して笑う。
穏やかな夜だ。
追われているとは思えない程の。

「でも俺は言っても男共だからなぁ。お前んところは女だろ、難しいんじゃないか」
「まぁな。女心は分からねぇし、俺の言うことをひとっつも聞きやしない」

年頃の娘を持つ親は、溜め息を一つ。
薬莢を煙草代わりに燻らせて、ハウンドはまたくくくと笑う。
嫌みのない、笑顔だった。

「ま、頑張れや、パパさん」
「はは、ありがとう」
「人間なんてろくなもんじゃねぇが、お前さんはまだマシだ」
「…すまん」

ケイドの沈痛な声が、地面に落ちる。
火のはぜる音が妙に耳に痛い。
たっぷりと間を置いたあと、今度こそ、ハウンドは声を上げて笑った。
ガハハ、と無遠慮な、それでも男らしい声で笑い飛ばす。
そして下を向くケイドの頭を、歴戦の傷がついた指で撫でながら、言った。

「俺ぁお前さんを買ってんだぜ、ケイド。お前は指名手配されてるボスを、わざわざ治したんだ。それも命を狙われてもついて来て、共に戦おうとするなんて!お前さんは馬鹿者だ。だが」

顔を上げさせ、しっかりと、目を合わせる。
ケイドは、戦士という生き方を実践する男を、その目で見た。

「俺はそういう馬鹿、好きだね」

じわじわと、ケイドの心に歓喜が広がる。
染み渡るそれは、認められた嬉しさか。
もしくは、己を肯定された喜びか。
どちらにせよ。

「…ありがとう、ハウンド」

自分は間違っていなかった、と。
やっと、実感できた気がする。
何故だろう、目に水分が集まってきた。
零れはしないが、すぐにバレてしまう量だ。

「おう」

それを、ハウンドは笑わなかった。
ただ、じっと、ケイドを見詰めている。
とても、優しい目だった。

「あんた、良い奴だな」
「今頃気付いたのか?おせーよ!」

穏やかな夜は更けていく。
だが、悪い気はしなかった。
2014/08/17
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