*シーメール設定
*ぽろぽろ書いてきたやつの本筋は一応これ…みたいな話






細い脚は隙間なくデニムで包まれ、13pのピンヒールがよりその長さを強調していた。
透け感のあるシフォンブラウスからは、女のような腕の細さと、 男のような筋ばった筋肉を覗かせており、肩にかかるキャミソールの紐と合わせて、艶っぽさが全面にでている。
短く斜めに切り揃えられた黒髪と、二房の紫。
大きな目元を彩る黒のアイラインとシャンパンゴールドのアイシャドウは派手すぎず、艶やかさを強調するのに役立っていた。
加えて、シャープな唇を際立たせる、紅。
キリリとした口許はまさしく美、である。

そういう、男とも女とも取れない美しさを持った者が、フォートレスマキシマス内を闊歩していた。
彼もしくは彼女は、ショックウェーブ。
戦中は諜報員としてオートボットを混乱に陥れた彼(便宜上以後彼とする)は、現在、エリートガード情報部に勤めていた。
戦後、改革によってオートボットとディセプティコンの壁が取り払われて以降、彼はある意味古巣ともいえる情報部での仕事を与えられたのである。
それは敵方でありながら長官にまで上り詰めた、彼の能力の高さに由縁する。
初めは面倒臭がっていた彼も、敬愛するメガトロンの一声で、今では立派な情報部の一員だ。
色々あったが故に監視の目はあるものの、彼はその演算能力をフルに活用し、セイバートロンの復興・発展に尽力していた。

もう一つ、彼を真面目に働かせている理由が、彼の腕の中に居た。
地球生まれのお騒がせ音響工作兵、サウンドウェーブである。
このちみっこはメガトロンがわざわざショックウェーブに付けた助手だ。
実はショックウェーブ、片付けが大の苦手であった。
机の上は勿論、床、棚、机の下まで、彼の部屋は人目がなくなると、すぐに腐海と化す。
書類やデータパットが殆どだが、オイル缶、菓子袋などが、何故か捨てられないのだ。
サウンドウェーブはそんな仕事は出来るのに残念な癖を持つショックウェーブをサポートするために、派遣された。
仕事にかまけると寝食を忘れる気まであるショックウェーブが人並みの生活を送れるのも、サウンドウェーブがタイミングを計りつつ食事に連れ出したり、部屋のゴミを片付けたり、来客の対応をしたり、子供特有の可愛らしさでショックウェーブを癒しているからである。
サウンドウェーブからすればショックウェーブは兄もしくは姉、はたまた母のよう自身を可愛がり相手をしてくれる存在なので、存分になついている。

そんな幼子は昨日、夜遅くまでお気に入りのバンドのライブ映像を見ていた為に、朝からずっと眠気を訴え、そして昼食中に眠ってしまったのである。
ショックウェーブはそんな幼子を自室で眠らせるために、廊下を歩いているところであった。
彼の幼子を抱く手は優しく、また時折寝言を発し身じろぐ幼子を見やる目は思いやりに満ちている。
それは彼の、他者を欺くための今となっては懐かしい姿に、似ていた。
銀の長髪はゆるく波打ち、涼やかな青が穏やかに灯る、あの姿に。

「おい、ロングアーム」

突然、彼らに呼び掛ける者が居た。
威圧感のある声に、ショックウェーブは溜め息を一つ吐くと、面倒臭そうな様子を隠しもせず振り返る。

「俺はショックウェーブだ、センチネル。わざとその名を呼ぶんじゃねぇ」
「ああ悪い悪い、つい癖でな」
「抜かせ」

ショックウェーブに声をかけたのは、オートボット総司令官センチネルだった。
オートボットの中でも大柄な彼は、ショックウェーブと並ぶほどの長身だ。
だが、体の厚みは全くの正反対である。
筋肉で膨れているセンチネルにも、ショックウェーブは投げやりな態度を崩さない。

「何の用だ」

問い掛ける声は重く、胡乱な視線は氷のようだ。
足を踏み鳴らしたいらしいが、腕の中の子供を慮ってかヒールはじりじりと床を擦るだけだった。

「まぁそう怒るなよ。お前に頼みたいことがあるんだ」
「他を当たれ。俺は忙しい」
「まっ、待て待て! お前じゃないと意味ないんだよ!」
「知るか」

センチネルの視線を振りほどき、ショックウェーブは自室に向かって歩を進める。
後ろで青の大男が慌てふためこうが、関係ない。
単純な身長差では負けていないが。

「総司令官として命令する、止まれ!」
「…ちっ」
「ったく、最初からそう素直になってればいいものを…」
「黙れ顎。とっとと用件を話せ、俺は忙しいんだよ…」

大げさに肩を竦めるセンチネルの顎に向かって、ショックウェーブの片手から三本の爪が生え、紫電を撒き散らし始めた。
パリパリと小さく放電する音が廊下に反響する。

「…お前、そんなに俺と話すの嫌なのか…」
「嫌だな」
「へーへー…分ぁったよ…これを、ブラーの所に届けてくれ」
「ブ、ラー」

その名が紡がれた瞬間、ショックウェーブの顔に、動きがあった。
先程までは嫌悪に染まっていた表情が、何やら困惑とも、一種の歓喜とも取れる様相になる。
センチネルは、それを見逃さない。

「ま、そういう訳だから。ちゃんと渡せよ。これは命令だからな!」
「…っ……了承、した」

幼子を抱き直し、押し付けるセンチネルからデータパッドを受け取ると、ショックウエーブはまた歩き出す。
その後ろ姿から垣間見える、データパッドに落とす視線の危うさに本人が気付いているのかどうなのかは、見送るセンチネルには分からないままだった。



ブラーと、ショックウェーブ。
二人は、とても微妙な関係にあった。
戦中、オートボットに潜入していたショックウェーブに、ブラーは惚れていた。
正確には、ショックウェーブが演じている「ロングアーム」という架空の人格に、だ。
ブラーは戦争が終わるまで、ロングアームの正体に気付かなかった。
ディセプティコンが解体され、ショックウェーブとして紹介された彼を見て、初めて事の真相を知ったのだ。
以降、二人はとてもギクシャクしていた。
ブラーはショックウェーブに話しかけようとして言い淀み、そのまま何も言えずその場を去る。
対してショックウェーブはそんなブラーに気付いているが無視をし、そしてブラーが去ってからその後姿をじっ、っと見つめているのだ。
そんなショックウェーブに普段の気怠そうな雰囲気はなく、どこか寂しげにも見えた。



ショックウェーブの仕事部屋、簡易ベッド。
彼はそこにサウンドウェーブを寝かせると、そのまま縁に座りデータパッドを眺めている。
熱がなくなったことに夢の中とはいえ気付いたサウンドウェーブがむずかるのを、撫でてあやし、抱き枕とタオルケットでくるんでやる姿は、母親のようだった。
それでも、ショックウェーブの顔から悲哀とも取れる感情は消えない。
データパッドを眺める目は、誰が見たって悲しそうであった。

「…よし」

消え入りそうな声で呟くと、彼はゆっくりと立ち上がる。
自動空調とパスコードを確認すると、サウンドウェーブ宛のメッセージをコンソールに吹き込んだ。
曰く、二メガサイクル後には戻ってくる予定だがそれまでに目が覚めたら菓子や飲み物でも食べて待っていてほしい。
それが録音できているかを確認し終わると、ショックウェーブは部屋を出た。
向かうは、ブラーの私室だ。



ブラーは自身の私室を荒らし回っていた。
預かったはずの資料が、ない。
どこにも、見つからない。
普段使っているメッセンジャーバッグも、机も、棚も、引き出しも、果てはベッドの下も探したが、ない。
データパッドの形式で、確かに手渡されたはずの資料は、影も形も見当たらなかった。
ブラーの脳内では様々な可能性…情報長官クリフジャンパーにおっそろしく怒鳴られている図や、センチネルからずるずるぐちぐち嫌味を言われている姿、――想い人に呆れられている図などが、浮かんでは消え、消えては浮かんでいる。
どうしよう、どうしたらいい!?
星一番である速度自慢の百面相は、絶えず続く。

「…殺される」

ともかく、資料を紛失したとなれば、クリフジャンパーから血祭りの刑に処せられるのは確実だ。
同僚のリジェが一度、ジャーマンスープレックスからの4の字固めに合っているのを、ブラーは目撃している。
その事態だけは、なんとか避けなければならない。
だがしかし、資料は無情にも見当たらなかった。

「どうしたらいいんだ…」

がくりと落ちる肩が痛々しい。
若干涙声になりつつあるブラーだが、気落ちしている場合ではなかった。

「とりあえず…自分が歩いたところをもう一度当たってみよう」

よし、と気合いを入れ、出入口へ向かう。
そのちょうど反対側で、カツカツと鳴る足音には気付かずに。
ブラーは手をかざし、ドアを開けた。
いや、開いた。

「へ?」
「なんだ、出掛けるのか」

視線がかち合う。
ブラーの身長では見上げればならない、紅い瞳。
黒髪によく映えていた。
細っこい手足も、綺麗な肩のラインも、よく通るが少し怠そうな声もよく知っている。
その後ろ姿を見慣れてしまった相手。

「あっ、あ、あ゛ーーーー!」
「…うるせぇ」

ブラーの想い人、ショックウェーブがそこに居た。



「コ、ココアと紅茶、どっちがいい…?」
「紅茶をストレートで。三分蒸らしてあると尚良い」
「あっう、うん…」

ブラーはどもりそうになるのを堪えながら、ショックウェーブに出す紅茶を作っていた。
自分用のココアは一先ず後回しにしている。
手が震えそうになりながらも、なんとか湯を沸かしたりティーバックを取り出したりとせわしない。
そんなブラーの姿を、ショックウェーブは何をするでもなく見詰めていた。
じいっと、ぼうっと。
だが、ブラーと視線が合いそうになる度に、その紅い瞳はふらりと逸らされるのだ。

「…散らかっているな」
「ち、ちがうよ!? これは資料を探すためであって普段はもっときちんと整理してあるし資料が見付からないからこうなったんだよ僕は調査でこの部屋を留守にすることが多いからなるべく家具は少なくしてあるんだけど本当はもっと綺麗だしこうじゃないし君をベッドに座らせたのは本当に申し訳なく思ってる本当にごめんね!!」
「知ってる」

この部屋に入ってから、ショックウェーブは初めて微笑んだ。

「一度来たことがある。お前らしくて、良い部屋だった」

本人も気付かないくらい儚いものだったが、ブラーには分かった。
それが欲しくて、彼は何度も迷ったのだ。

「…そうだね、懐かしい」

湯気の立つやかん。
かちゃかちゃと鳴るカップの音。
そういえば、この部屋に紅茶が置かれるようになったのは、長官が好きだと言っていたから。

「ロングアームが恋しいか」

長官の為に用意していたカップをソーサーに置いて、ショックウェーブに手渡そうと、した。
時が止まる。
ショックウェーブの声には何も籠っていない。
紅い瞳だけがきらりと光る。

「…君がそれを言うのかい」
「俺だからだ。そうだろう?」
「そう、うん、確かにその通りだ君以外からこんなこと言われたらいくら僕だってどこかがぷつんとしまいそうだよははは難しいねとても難しい僕は何て言えば正解なんだろう」

ブラーは押し付けるように、ソーサーをショックウェーブに渡す。
相変わらずショックウェーブの瞳に変化はない。
青の多い部屋の中で、彼だけが異質な黒だった。

「…すまなかった」

何が。
床に座り込むブラーに、ショックウェーブの顔は伺えない。
ブラーが目を合わそうとする度に、彼はするりとどこかに視線をやってしまう。
直視が怖いのか、はたまた。

「それはどういう意味で?」
「不躾なことを聞いた、という意味でだ。そして俺は俺がボッツに対して行ったことを謝罪する気はないぞ。あれが俺の戦いだった」

ならばどうして、彼は彼の以前の姿の為に誂えられたカップを、戦慄く指で握っているのだろう。

「…いいよ、もう。確かにロングアーム長官は恋しいね僕が他人にあれ程入れ込んだのは初めてだったんだ彼のあまやかな笑顔も優秀な頭脳も清廉な態度も中性的な物腰も全て僕にとっては輝いて見えた美しかった走ること以上にこんなにも興奮することがあるんだって知ったのは長官のことを考えて一喜一憂してる自分を自覚してからだったよああ確かに僕は、」

乾いた笑い。

「彼が好きだったんだ」

耳に痛い沈黙。
二人の間に、言葉は意味をなくしてしまった。
空調の音だけが虚しく響く。
ブラーは顔を膝に埋めた。
そのせいで、ショックウェーブの瞳に水分が厚い膜を作り出したことに気が付かなかった。

「そうだよな」

努めて平静を装い、そして失敗した声が床に落ちる。
そのまま壊れて割れてしまいそうな声だった。

「紛らわしい真似をした。もうお前には会わないよ。俺はショックウェーブだ。今更、ロングアームになど、なれない」

膝に埋まった顔の中、目が見開かれる。
彼は今、なんて?
何と言ったのだ。
会わない、僕に?
もう、彼が?
衣擦れの音しか耳に入らない。

「ああそうだ、忘れていた。センチネルからの届け物だ。じゃあな」

重い物がベッドに投げ出される音がした。
カツコツ、ヒールが床を蹴る音もする。
待って、待って。
僕はまだ、何も伝えてない。
あんなことが言いたかった訳じゃない!

「待って!」

ショックウェーブが扉を開け、廊下に身を出したその瞬間。
ブラーは彼の腕をなんとか掴んだ。
振り返った彼の顔は、とても青褪めていて、あの鉄面皮な彼もそのような表情をするのかとブラーはブレインの片隅で思った。
振り落ちる沈黙に、ブラーも、ショックウェーブも、言葉を探しあぐねている。
伝えたいことは山のようにあるのに、それが口を離れることはないのだろうか。

「…離してくれ」
「い、いやだ」
「離せよ…!」
「やだ!離さない!」

ショックウェーブの白くて細い片腕が、赤い目を覆った。
何かに耐えるような口の結び方をしている。
握った腕から伝わる体温に、ブラーは無性に安心していた。

「…泣いてるの?」
「…泣くわけねぇだろ、バカが…」
「ごめん、ごめんねショックウェーブ君を傷つけるつもりはなかったんだただ僕の気持ちを整理したかっただけなんだ聞いてくれるかいショックウェーブ、僕の思いを」
「…なんだよ」

それでもショックウェーブの視線がブラーに向けられることはない。
微かに腕が震えていた。
ブラーはそれに気がついて、だけどもそのことには何も言わないことにした。
伝えるべきは、他にある。
顔を上げ、はっきりとショックウェーブを見詰めた。
視線を反らすつもりは、もうない。

「僕は、君が好きだよ」

凛とした声だった。
迷いのない、真っ直ぐな。
その声に反応して、ショックウェーブの伏せられていた瞳が、今一度見開かれる。

「ロングアーム長官と比べる気はないさ確かにあの人のことはすごく好きだった初恋みたいなもんだから、でも僕は君が好きなっちゃったんだロングアーム長官じゃなくて君自身がね。話しかけたかったすごく話しかけたかったんだよだけど君はいつでも忙しそうであの小さい子がいて僕なんかが話しかけてもいいかとても迷ってたんだ。だから君が部屋に来てくれて僕はとても嬉しかったんだよこれは紛れもない本心さ」

弾丸のように紡がれる告白に、ショックウェーブは為す術もない。
ただ耳をすませて、聞いていた。
ブラーは彼にだけに許される身勝手をもってして、言葉を編み続ける。

「僕は君の責任感の強いところが好きだあの小さい子に見せる優しい笑顔が好きだなんだかんだでクリフやセンチネルのサポートを忘れない心配りが好きだ君の華奢な体も鋭い目付きも服装も声も全部ぜんぶ、好きだよ、ショックウェーブ」

握られた手が熱い。
火傷しそうな程だ。
それでもショックウェーブにはその熱さが心地よかった。
その熱量が、たまらなく欲しかったのだ。
ずっと憧れていた、何の隔たりもなく触れ合えることに。
ずっと諦めていた、想いを伝えることに。
けれどもう我慢しなくても良いのだと、やっと実感することが出来た。

「おまえ、は」
「うん」
「本当に、馬鹿だよ」
「そうかな」
「そうに決まってんだろ…こんな、こんな、裏切り者に惚れて、殺されかけて、また惚れて、……。馬鹿だよ、ほんとばか…」
「泣かないで、ショックウェーブ」

開いた身長差を埋めるため、ブラーはショックウェーブの顔に手を伸ばす。
白魚のような手の隙間から見える刃物の如く鋭い美は、静かに涙を溢していた。

「ねぇ、君も僕が好きだって、勘違いしてもいいのかい?自惚れてもいいのかい?君の隣に居てもいいのかい?君のことを好きで居てもいいのかい?」
「……ああ」

口の端で弧を作り、ショックウェーブは笑う。
それはブラーが何としても欲しかったものだ。
優男は蕩けるような笑顔を自然と作り、そして。

「ショックウェーブ、ありがとっ…!」
「うあああああああああ!!!!」

壁にめり込んだ。

「何事だ!?」
「ショックウェーブぅぅ!さがしたよぉおどこいっでだのぉぉぉしゃ、しゃうんどうぇーぶざみしぐて、さみじくで…!」

ブラーを突き飛ばしたのは、自室で寝ているはずの幼子…サウンドウェーブだった。
だか今の彼は大人の体をしている。
恐らく、ショックウェーブを探し出すために大人の体に変形したのだろう。
今はその姿のまま、ショックウェーブに抱きついて赤子のように泣いている。
それは迷子になり、親を必死に探していた子供と同じであった。

「あ、あぁ、ごめんな。寂しかったよな、ほら、よしよし…」
「うぁぁぁん!うぁぁぁぁぁん!」

泣いていくうちに、萎んでいく体。
そんな可愛い幼子を抱き上げ、必死にあやすショックウェーブに、先程までの悲壮感は見当たらない。
ブラーは壁に伝い落ちながら、二人の間に子が出来たらこんな光景を見られるようになるのか、と、前向きなことを考えていた。

「しょ、っくうぇーぶ…」
「だ、大丈夫か…!?」
「う、うん、一応…」
「やだぁぁあしょっくうぇーぶはさうんどうぇーぶのぉぉ…!」

えぐえぐと泣きすがるサウンドウェーブには、どう頑張っても勝てないだろう。
今も自分のことを気にしながらもあやし、慰め、なんとか機嫌を取り直そうとしている。
そういう面倒見の良さにも惚れているのだ。
そして焦る姿は新鮮で可愛らしかった。
新たな一面を見られただけでも、今回は良しとしよう。
ブラーは壁にめり込まされた衝撃で垂れ始めた鼻血を拭い、立ち上がる。

「ショックウェーブ、ちゃんとした返事は明日貰っていいかな」
「あ、ああ」
「僕はもう大丈夫だから君はその子の為にも部屋に帰ってあげて書類をわざわざありがとう明日君に会えるのを楽しみにしているよそれじゃまたね」
「待て、ブラー」

振り向き様に見た彼は、地球で紹介された女神像のようだと、ブラーは感じた。
儚げで、けれども慈しみに溢れた笑みを浮かべる、そんな女神に。

「ありがとう」

初めてまともに見る彼のそんな表情に、もう一度恋に落ちた気がした。
彼からもたらされるありがとうの音は、この世界の何よりも、己に幸福を運んでくる。
そう、思った。



「顔真っ赤だよ」
「うるせぇ」
「照れるくらいなら言わなきゃいいのに」
「だまれ」
「あーあ、やだなぁ、ショックウェーブがボッツの物になっちゃう」
「…別に、そういうんじゃねぇよ」
「じゃあメガトロン様になんて報告するの?」
「それは、」
「サウンドウェーブ、あんなのを義理のお兄ちゃんだと思いたくない」
「待て、飛躍しすぎだちょっと待て」

...end

2014/07/21
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