*ツイッターのフォロワーさんの誕生日に捧げたもの
*ぬんちゃん誕生日おめめたぁ





「好きだよ」

臆面もなくそういうことを言えるところが、嫌いだっつってんだろ。

「好きだよ、ボス」
「儂は違うな」
「もーいけずなんだからぁ」

薄い青をした若い男の、にやけ面が腹立たしい。
少しは諜報の仕事をしたらどうなんだ。
そう問えば、終わらせたと素早く返される。
どう終わらせた、と問えば、数分前に諜報先は調べ終わり今はブラスターがその情報を精査してくれている、と返ってきた。
意外とまともな仕事ぶりに、文句の一つでも言ってやろうと思っていた口も閉まる。
若者はそんな年経た上司の苦悶の表情にさえ、笑みを溢すのだ。

「何を笑ってやがる」
「んー?んふふ、ボスが俺のこと考えてくれてるって思ったら、嬉しくて」

す、と細められた瞳は、雑誌の表紙かと見紛うそれであった。
大層な男ぶりは、しかし彼の恋しいひとには届かず意味を成さない。

「そうか、そのまま儂の視界から外れていろ」
「なんで!?俺はこんなにボスのこと見ていたいのに!」
「視線がうるさい。それに儂は糞の役にも立たん部下は要らん」
「ひっど!」

それでも素直に体をずらし、上司の斜め後ろあたりに椅子を移動させ座るブラーに、見守る他の仲間は苦く笑うしかなかった。
我らがボス、カップは静かに確認作業を進めている。
全ての資料に目を通すその長くもないが短くもない時間を、ブラーはじっと待った。

「ボスぅ」
「…」
「俺さぁ、ボスのこと本気だかんね。そこはちゃんと覚えておいてよ」
「…」
「……」

データパッドを睨み付けていたカップのオプティックが、ぐるりとこちらを振り返る。
若い男は笑っていた。
楽しそうな笑みだった。

「好きだよ、ボス」

慈愛に満ちた声に、優しい雰囲気。
弧を描く口許は優雅で、足を組み膝部分に肘を乗せた姿勢は映画俳優の如し。
けれどもカップは鼻を不満げにすん、と鳴らし、言う。

「儂は愛してるぞ、kid」

ブラーが真後ろにひっくり返る音が部屋に響き渡る。
進展を見守っていた周囲の者は呆れを含んだ笑いに沸いた。
カップはもう一度不満げに鼻を鳴らすと、視線はデータパッドに逆戻り。
ブラーは端正な顔を両手で包み、悶えていた。
呻き声のような音が漏れ、そのまま左右にごろごろ転がっている。

「ぐぁぁあずるいよぅボスずるいよぅすき、あ、愛してるゥ…!」
「へーへー、分かったから早く邪魔にならねぇところに移動してろ」
「もうっボスのツンデレのせいで俺のスパークはビンビンだよ!」
「撃つぞ」
「ごめんごめん、とりあえず仕事終わったら声かけてね!デートしよ」

語尾にハートマークが飛びそうな、幸せそうな声でブラーはカップに話しかける。
後ろでスプリンガーが苛ついた視線を投げかけてくるのは無視をする。

「儂の部屋で待ってろ、悪戯するんじゃねぇぞ」
「分かったよボス!」

瞬間、風の早さで走り去る浮かれた若者。
司令室には、無表情に見せかけて片側の口角が少しだけ吊り上がったカップと、ノロケに巻き込まれたレッカーズの面々が残された。
2014/07/16
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