*シーメール設定










ロングアームの髪はとっても綺麗だ。
銀が光に反射してきらきらしてたり、長い髪を気だるげに耳にかけたりしてるときなど、モデルさんみたいにきまってる。
あと手先が器用だから、訓練のときに高めの位置で一つに結ってたり、お団子にしたり、おさげにしたりとバリエーション豊かで見ていて飽きない。
今も、一房を三つ編みにしてそれをカチューシャのように頭に囲ませている。
目の前でさくさくと行われる作業には舌を巻いた。
ロングアームってすごい。

「お待たせ、さ、ご飯にいこうか」
「ぜーんぜん待ってないよ!その髪型もとーっても似合ってるね!」
「はは、ありがとう」
「ほんとロングアームってすごいなぁ。可愛いし、強いし」
「私のことを何のてらいもなく可愛いなんて言うの、バンブルビーくらいだよ」

ロングアームが少し照れを滲ませて笑う。
そういうとこ、すごく可愛い!

「そうなの?だって本当のことだもん!ロングアームは可愛いよ、自信持って」
「…ふふ、そうかな。ありがとう、」

不思議な表情をして、ロングアームは応える。
なんだろ、おいらなんか気にさわること言っちゃったのかなぁ。
でも隣を歩くロングアームの足取りはとても軽くて、機嫌が悪くなった訳ではなさそう。
よかった。

「ねぇロングアーム、これってデートみたいだね!」
「あ、ああ、確かに」
「じゃあおいらが君をエスコートするよ!お手をどうぞ、お嬢様。なんちて!」



ああ、やめてくれ。
そんな風に微笑まないでくれ。
抑えている気持ちが綻んで漏れだしてしまいそうになる。
お前は知らないだろう、俺がディセプティコンであることを。
お前は知らないだろう、俺がお前を陥れようとしたことなど。
どうして俺に笑いかけるんだ。
やめてくれよ。
お前を殺せなくなるだろう。

(俺みたいな、どちらでもある奴に、何の気もなしに誉めてくるなんて)

いいや、分かっているんだ。
バンブルビーが俺になついている理由など。
苛められているところを助けて、一人にさせないように側に居る。
そりゃ、雛が親鳥の後を着いていくように懐き方もするだろう。

(ばかなやつ)

利用されていることに気付きもしない落ちこぼれ。
何かが足りていない、足手まとい。

(ばかなやつ…)

それなのに、それなのに。
その挙動から、見張り以外の意味で目が離せなくなったのはいつからだ。
てらいのない誉め言葉に、くすぐったさを覚えるようになったのはいつからだ。
信愛の情を浮かべる瞳を、心地良いと感じるようになったのはいつからだ。
答えろ、ショックウェーブ。
何故あいつを、殺したくないんだ?

(惚れた腫れたなんて、縁のない世界に生きてきたのに)
(お許しください、メガトロン様)

俺は、こいつに。


「ロングアーム?」

はっ、と視線をバンブルビーに戻す。
きょとりとこちらを見上げてくる青い瞳に、泣きそうになった。
俺達と、こいつは違うんだ。

「ご、ごめん。エスコートしてくれるんだよな。任せるよ、お兄さん」

小さくて頼りない手を、両手で包む。
ちゃんと可愛らしい動作になっただろうか。
ちゃんと可愛らしく微笑めただろうか。

「へへ、任されたよ!さっお腹空いちゃったし早くいこっか!」

手を握り合い、外に続く道を歩く。
視界の端で銀が揺れた。
己本来の色とは正反対のそれに、俺は何を思えば正解なのだろう。

今はただ、この目の前の黄色にだけは――。
2014/07/15
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