ずるいよなぁ。
ぽつりと漏れた一言に、振り向く。
私の寝床に無造作に座りながら、年若い恋人がこちらを見詰めていた。
どうしたんだい。
そのまま向き直って、彼に問い掛ける。
芸術的な美しさを持って足を組んでいる恋人は、ぶすくれた顔をしていた。
あんたのことだよ。
指一本を使って、手招き。
バンブル達と見た、人間の映画のような仕草だった。
それが似合うのはやはり、彼が特別に美しいからなのだろう。
私かね?
ゆったりとした動作で歩み寄れば、彼は組んでいた足を解き、私の腰を掴んで抱き上げた。
そして、彼の膝の上に据えられる。
至近距離で向き合う私達。
赤い表皮に澄んだ青い瞳のコントラストは、いつ何時見ても美しい。
燃え盛る火山に映える青空のようだ。
いつもそうだ、どうして僕を放っておくの?
私が見上げているはずなのに、私の足元にすがりつく子犬くんを見ている気分になる。
不安そうに見てくる視線の中に含まれる感情は、拗ねと哀切だろうか。
少し首を傾げて訊ねてくる整った顔立ちは、それこそ世界に名だたる名画のようだった。
放ってなんかいないさ、今だって君を見ている。
咎めるように頬に添える手に、知らず擦り寄ってくる彼は、もしかして。
とても、寂しかったのかな。
ビーチィ、僕は我儘な男なんだ。君に構って貰いたくて仕方ないんだ。
こつりと合わさる額。
閉じられた青い瞳。
腰に添えられていた彼の手は背中に回り、私をぎゅっと抱き締めてくる。
若い彼の可愛らしい態度に、思わず緩む口許。
君の大好きな専攻研究に没頭している姿は、とても格好良い。見とれていたよ。でも、でもさ。
ふわりと開かれたオプティックにまとわりついている水っ気に、少し罪悪感。
いつもは澄まして洗練されたものを好む彼が見せる、こうしたいたいけな仕草は、私を魅了してやまない。
僕のこと、もっと構って。好きって言って。
爽やかな声が震えている。
赤い滑らかな顔が更に赤みを増している。
ごめんね、こんなにも不安にさせてしまって。
私はなんて悪い恋人だろう。
トラックス。
努めて優しい声で。
万感の想いを込めながら。
君が好きだよ。
身長差の有りすぎる恋人を、ぎゅっと抱き締める。
泣き出しそうな顔を胸で包み込み、優しく撫でた。
僕も。
私の胸にすがりつきながら、ぼそりと彼が呟いた。
背に回った腕に力がこもる。
パーツが軋んでしまうのではないかという考えがブレインを過ったが、まぁ今はいいだろう。
今日のお詫びに、今夜はいっぱい可愛がってあげるよ。
彼の首の配線を優しく撫でながら囁いた一言に、彼の機熱が一瞬で高まったことは、私だけの秘密である。

2014/05/05
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