※現パロ
※ブロードキャストが女の子
※攻めだけど
※キャシーちゃん音楽プロデューサー、トラックスくん外車ディーラー






「じゃあ、行ってくるね!」

そう言って、愛しい彼女は出かけていった。
これから一週間は帰って来ない。
担当のバンドがアルバムを収録するから、その編集作業に追われるのだ。
缶詰め状態になる為、おそらく連絡さえそう取れないだろう。
寂しい気もするが、彼女の人生を捧げている仕事なのだから、応援したい。
ただ…。

「どうして毎回、僕の一番お気に入りの鏡を封印するんだよぉ…!」

彼女の出張はよくあることだ。
仕事の出来るコンポ―サーなのだ。
おまけに人当たりは良く気さくで、アレンジも神がかってる(らしい。僕にはよく分からないけど)。
だから担当するバンドは沢山あって、頼まれればロック系以外の収録にも参加するらしい。
なので、その度に長期で家を空けることになる。
一人暮らしをしている時はその空っぽになる家と家賃がもったいなかったらしく、同棲を持ちかけたときはあっさりOKを出してくれた。
今は僕が彼女の家を守ってる。
一緒に住むことで二人の時間も増えたし、何よりも頼られているという実感が持てて、嬉しかった。
嬉しかったんだけど、まさか。

「出張の度に鏡を封印するなんて言ってなかったじゃないかぁ…!」

僕が一人暮らししていた時から気に入っていて、同棲を始めるにあたって彼女の家に持ち込んだ、お気に入りの姿見。
デザインも、大きさも、全てが僕のお気に入りで、僕の大好きな僕を一番美しく見せてくれる大事な鏡。
それを、それを彼女は…!
「おれっちが帰ってくるまで一回も見ちゃだめだかんね! 見たらオシオキしちゃうぞ☆」
と、鍵付の覆いを被せて行くんだ。
しかもちゃんとした鍵で、わざわざ布地に縫い付けてあるし、暗証番号式なのも手伝ってまだ開錠出来たことはない。
何してるの、本当に。
聞けば共通の知り合いに製作を依頼していたらしい。
ねぇ、ほんとに何をしてるの。
その人(マイスターっていう音楽通。手先が器用で何でも出来るMr.完璧)は面白がって絶対に開錠方法を教えてくれないし、その上もし壊したら即座に改良版作るからね☆って脅されてる。
何なんだよみんなして…!
僕を何だと思ってるんだ!

「ちょっと自分が大好きなだけじゃないか、僕が何をしたっていうんだ」

これが漫画ならばぷんぷん、という擬音が出ているだろうなぁ。
そんな気分で、今は封された鏡を撫でる。
ああかわいそうな僕の鏡。
本来の職務を全うできないなんて、ひどすぎやしないかい。
溜息を吐きながら、また鏡を撫でる。
素材に阻まれているのが憎らしい。
腹が立ってきたから、今度マイスターさんが恋人へのサプライズ協力を頼んで来たらチクってやろう。
コンボイさんに怒られればいい。

「…ご飯でも作るか」

憂鬱な気持ちになってしまった。
今頃、マイスターさんはコンボイさんとラッブラブな休日を過ごしているのだろう。
今日は折角の祝日なのに、なんでブロードキャストは…。
いや、考えても仕方ない。
彼女は売れっ子なんだ。
それに、僕だって普段は世間が休みの日ほど仕事なんだ。
こういうことが今までなかった訳でもない。
だから、きっと今回だって大丈夫。

「寂しくなんか、ない」

その呟きは、他人の気配のしない広い部屋へ、簡単に霧散していった。
2014/03/24
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