*ブラスタ前提のサンクラ+スコルポノック
*色々とうっすらした知識で書いている



かりかり、と、扉を尖った物で擦る音がする。
サンダークラッカーはブレインサーキットに直接届いたメッセージに返事をしながら、自室の扉を開けた。

「またマイロードとクソヘリは喧嘩したのか」

かさこそ。
蠍型ドローンは勝手知ったるとしか思えぬ迷いのない足取りで、サンダークラッカーのベッドによじ登る。
途中で足がつかなくなり、宙ぶらりんの姿勢のままベッドの持ち主に抱えあげられるのも、いつものことだった。

「キュッキュッ」
「今夜はそちらか、まぁ良い。ゆっくりしていくがいい」

蠍型ドローンの為に備蓄しているエネルゴンキャンディーを取り出しながら、溜め息を吐くサンダークラッカー。
家主の呆れを隠しきれない表情に、蠍型ドローンスコルポノックはきゅきゅきゅと笑う。
笑い事ではないぞ、と言いながら優しく手渡しされるエネルゴンキャンディーは、スコルポノックの大好物だった。
かじりつく可愛い蠍に、サンダークラッカーの端正な顔も微笑みを作る。

「全く、いい加減にしてほしいものだな、あのご夫婦にも」


サンダークラッカーの主、スタースクリーム。
スコルポノックの主、ブラックアウト。
彼らは犬猿の仲でありながら、婚姻関係を結んだ立派な夫婦である。
仲間内にそれが知らされたのは、二人が婚姻の為の仲人を、ディセプティコン頭領メガトロンに頼みに来た時だった。
何かの罰ゲームだと思う者、やはりかと嘆息するもの、自分には関係ないと立ち去る者など、様々な反応で溢れる作戦室。
当のメガトロンといえば、呆れたような溜め息を一つ吐くと、そのまま二人の要請に応じるだけだった。

斯くてブラックアウトとスタースクリームは夫婦となり、二人で過ごすための居住区を作った。
スコルポノックはブラックアウトの共生体であるから、主と同室で暮らすことに抵抗はない。
だが共生体ではなく一個人であるサンダークラッカーは違った。
サンダークラッカーにとって、ブラックアウトはあくまでもスタースクリームの伴侶、という認識のみだ。
そこに父親面を持ち込まれるのは、たまったものではない。
彼が父性を感じる相手、それは幼い頃からスタースクリームと同じくらい彼の面倒を見てくれ相手をしてくれたショックウェーブだけである。
なのでサンダークラッカーは今も彼らと室は共にせず、一人部屋を与えられている。

「お前はよくあの二人と同室で平気だな」

私は無理だ、嘆きのようなものを滲ませ、ジェットロンの若人は言う。

『スコ、ブラクアウト、すき、すき』
「それは知っている」
『スタ、やさしい、やさしい、すき』
「…勿論、知っているさ」

サンダークラッカーの脳裏を過るのは、幼い頃の記憶。
敬愛する主に慈しんで育てられた、優しい思い出だ。
スタースクリームが身内に殊更甘いことは身をもって知っている。
だからこそ、スコルポノックが言っている意味も理解できるし、納得していた。

『クラ、ブラクアウト、きらい?』
「きらい、ではない。…一応」

ブラックアウト本人に言うつもりは一切ないが、サンダークラッカーは彼を嫌ってはいない。
むしろスタースクリームを幸せにしてくれるのは、ブラックアウトしかいないとまで思っている。
輸送機らしく気の長いときはとことん長く、スタースクリームと全力で喧嘩して負けても諦めずに食い付いてくるところなど、他の機体にはない特徴だ。
だが、同時に奴は愛しいマイロードを己から取った憎いクソヘリ野郎でもある。
分かってはいるのだ、これは親をとられて嫉妬にかられる子供と同じ考えなのだと。
でもムカつくものはムカつく。
フラットラインにからかわれることも更に苛々に拍車をかけていた。
負のオーラを撒き散らし始めたサンダークラッカーに、スコルポノックは怖じける素振りも見せずに抱き付く。

『クラ、クラ、ブラクアウト、すき、すき、スコ、うれしい』

キュキュ、と愛らしい声で鳴くドローン。
さしものサンダークラッカーも、殺気だっていた気配が身を潜め、整った顔によく似合う微笑みが浮かぶ。

「…お前がそう言うなら、それでいい」

尻尾をふりふり、手もふりふり、鋏をかしゃしゃ、スコルポノックの機嫌は上昇する。
敬愛する主人と、その主人が愛する機体。
二人が幸福を味わうこと、主人の幸せが、スコルポノックの幸せだ。
そこにこの、格好良くて優しい兄のような存在がいると、もっと幸せだと思う。
だってほら、自分を撫でて抱き締めてくれるこの腕は、こんなにも慈しみに満ちている。

『クラ、すき、スコ、クラ、すき』

たっぷりの沈黙。
水色の爽やかな機体色が、ゆっくりと温められていく。

「私もだよ」

ともすれば風の音かと思ってしまいそうなほど小さな呟きだったけれど。
スコルポノックには、しっかりと聞こえていた。
すりつく体に迷いはない。
今日は気分良く眠れそうだ。

キュキュキュ、と最後に鳴くと、二体はそのままスリープした。
明日もきっと、あの夫婦は喧嘩していることだろう。
でもまぁ、それも二人らしくていいんじゃないかな。
穏やかな顔で、きょうだいは笑いあった。
2014/01/05
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