*シーメール設定



夢を見た。

それは幸福な夢なのだろう。俺は愛らしいフリルが使われたふんわりと膨らむスカートを履き、肌の露出を控え、華やかに笑っていた。髪はゆるくウェーブした銀で、ああ、その姿を俺は知っている。
連れだって歩いている男も知っている。青で纏めた装束に、整った顔をした早口の男。俺はそいつを知っている。
これは夢だ。だって、そいつは俺が始末したんだから。秘密を知られたからには消さなければならない。それが俺のここでの仕事だからだ。こことは、どこのことだろう。
俺はディセプティコンで、俺はショックウェーブで、俺は、俺は。
ロングアームなんて存在は、初めから無いのに。
この男は、ずっと執着していた。

馬鹿な男だ。ようやく誘えた多忙な情報長官を少しでも楽しませようと、常よりも喋りまくり道路の石段につまずきかけていた。元レーサーらしいスマートな出で立ちとは真逆の行動である。

でも、楽しかった。楽しかったんだ。やりたくもない仕事は山積みで、作りたくもない笑顔を振りまき、“みんな”から慕われるロングアームに押しつぶされそうになっていたのを、こいつは。図らずもその馬鹿な行動で癒してくれていたんだ。

そうか。だからか。だから、ショックウェーブである俺が、目の前を通り過ぎた仮初の恋人たちを、羨ましそうに見ているんだな。

夢なんて、とっとと覚めればいいのに。

2013/11/16
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