・本編には居ないロディを捏造しています
・ロディ→←マグナスが正しい
・マグナス視点










英雄になりたい、と彼は言っていた。
それが彼の夢であった。
私は毎日、彼の夢を隣で聞いていた。

今思えば、なんて幸福な日々だったのだろう。

私と彼は、当初は反発し合う候補生だった。
彼は奔放で、私は自他共に認める生真面目男。
仲良くなれる予感など、どちらにもなかった。
だが教官は無理やり私達を組ませ、共に行動することを命じた。
嫌悪に塗れていたが、仕方がないと諦め、共に居た。
無言で居るのも疲れるのからと会話の機会が増え、否が応にも互いを知った。
喧嘩も何度もした。
意見のぶつかり合いは勿論、各々の攻撃スタイルでも何度も反発し合った。
だが不思議なもので、ぶつかり合えばぶつかり合う程に、私達の間にあった壁のようなものは、溶けだしていったのだ。
彼は奔放だがきちんと思慮深いところもあり、なにより勇気に溢れていた。
そして彼の言う「英雄になりたい」という言葉に嘘がないことを、彼自身が証明しているのを感じ、私は疑っていた自身を恥じた。
彼は私の告白も笑って受け入れ、そしてまた彼が抱いていた私への不信を詫びた。
そうして私達は、友人となったのだ。

彼は言った。
「英雄になりたい」と。
司令官を超える、全てを守れる英雄になりたい、と。

私達オートボットの司令官はマトリクスに選ばれた若き男で、聡明な方だった。
彼は何事においても完璧で、戦闘スキルは勿論のこと、弁舌も身のこなしも全て、司令官に相応しい人であった。
私は彼に憧れていた。
彼のような完璧になりたかった。
だから彼の副官候補に選ばれた時は、表情にこそ出さなかったが狂喜乱舞したのだ。
彼はそれを我が事のように喜び、祝福してくれた。
私が司令官の側で任務に就き、彼が前線部隊に配置された後も、私達の交流は続いた。
ずっと、私達は共に戦っていくと、信じていた。
信じていた、のに。

「なぁマグナス」
「なんだ」
「俺、英雄になりたいんだ」
「いつも言っているな」
「当たり前だろ! 俺の夢なんだ、英雄になることは。ヒーローはカッコいいだろ」
「実績を伴ってから言え」
「…それなんだけど」

これが今生の別れになるなんて思っていなかった。
何故なら彼の部隊はいつもトップの戦績を引っ提げて帰還し、それこそ彼の目指す『英雄』と称される活躍をしていたのだ。
実績なら数多くあった。
私はそれを知っていたのに、なぜあんなことを言ったのだろう。

「俺、今度探査に出るんだ。ディセプティコンの多い地区に、多分少数部隊で」
「帰ってこられるか、正直微妙だ。なんせ激戦区なんでね」
「でもさ、マグナス」
「俺が帰ってきて、司令官を超える英雄になれたら、その時は」

彼の目はいつも輝いていた。
その青く透明なオプティックは、彼の強さまでも表しているようだった。
彼はどこまでも真っ直ぐだった。

「俺の隣で、俺の為に――」

彼の声が、今でもブレインに焼き付いて離れない。









白状しよう。
私は彼に惚れていた。
彼を好いていた。
情愛を抱いていたのだ。
それは彼も同じで、彼も私に劣情を抱いていた。
若く幼い私達は、夜毎、単純な方法でその思いを確かめ合っていた。
私は確実に彼に影響され、また彼も私に馴染み、私達は二つで一つとなっていった。

引き裂かれる痛みを、私は未だ抱えている。
治らぬ傷は私のスパークに深い裂傷を作った。
それを治せるのは帰らぬ彼だけだと、私は感じていた。

もしもまた、彼に会えるのなら。
私はこの身を投げ出しても彼に縋りついてしまうだろう。
ただ、後を追うことが出来ないのは。
彼がそのようなことを許さないという、確信めいた思いがあるからだ。
だがそれは。
情けないくらい悲しい言い訳でもあるということを、私は知っている。
2013/08/30
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