*ガチゲイブラーくんとシーメールロングアーム長官
*ギャグオチ







 手を引いて、廊下を進む。久しぶりに会った長官は、知らない男と話していた。民間ギルドの偉いさんらしい。誰にでも愛想を振りまけるのは長官の良いところだけど、今は見たくなかった。

「ブラー、離してください」
「嫌です」
「離しなさい」
「僕との約束が先だったはずですが」
「彼とは催事で連携が必要なんですよ」
「ほら、また」

 自室に着き、ドアを開け長官を投げ込むように部屋へ通した。後ろ手でロックをかける。二人きりの完成だ。たたらを踏む長官を、素早くベッドに押し倒した。

「敬語、早くとってください」
「…ブラー、君が何をしたいのか私には分からないよ」

 呆れた声で見上げてくるロングアームの、さらりと長い髪が、ひどく女性的に見えて嫌だった。僕の趣味ではないのだから。

「嫉妬ですよ、ただの」
「そうか、では問題は解決だな。彼はもう居らず、我々は二人きりだ」
「そうですよ、ロングアーム」

 にっこり、笑いかける。レーサー時代から、この笑みを見せれば大抵の機体は勝手に落ちてくれた。彼に効くかは、分からないけど。

「早く退いてくれ。私には仕事があるんだ」

 語気の強いロングアームとは珍しい。彼は普段、穏やか過ぎて菩薩なのではないかと噂されている程なのだ。けれども僕には意外と、色々な表情を見せてくれる。僕はそれを知っている。これはきっと、本人も気付いていない。

「嫌です」
「…何故」
「僕とデートしてくれるって、この前約束してくれたじゃないですか」
「あれは、」
「長官ともあろう方が、約束を破るので? 部下に示しがつかないのでは?」

 にこり、また笑う。

「…今回だけだぞ。それで、デートとは具体的に何をするつもりだ?」
「それはですね」

 ロングアームの服の合わせに、指をかける。刹那、ぎょっとした顔のそこを凝視するロングアームが居て、その慌て振りが可愛かった。
 彼にこういう表情をさせるのは、僕だけでいいんだ。こちらに伸ばしかけた手を、備え付けのランプに繋がるコードで縛る。固定も出来て、一石二鳥だ。

「や、止めろブラー!」
「嫌です」
「君は、何を…!」
「貴方を食べさせてください、ロングアーム」

 唇に舌を這わせ、にいと微笑む。怯えが走るロングアームも可愛かった。さてさて邪魔な衣服はぽいっと、と思いながらワイシャツに手をかけると…なんだか、一部が膨らんでいる。なんだ、これ。もしかして、お、っぱい?
 ガバリ、下着をめくる。ブラジャーに包まれた乳房が、そこにあった。

「…え?」
「…?」
「ロ、ロングアーム、貴方の性別っ、て…」
「…私は、シーメールです」

 世界が壊れる音がした。え、だって、長官、トイレも男性用で、普通に男同士の、え?

「うそ、だ」
「…あのねぇ、この胸を見てなんでそう思えるんだよ君は馬鹿か」
「だって、僕、女、む、り…!」
「ば、馬鹿! 吐くな! ここで吐くなよ!」

 僕の意識は、ここで一度ブラックアウトした。

2013/06/11
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