「ミーの言うこと聞けザンス」
「へっ、やーなこった」
「…」
「…ダー」

顔をグイッと寄せ、目を合わせる。
寝台の上、馬乗り、真夜中。
賭けみたいなもんさ。
どちらが先に折れるかの。

「なんでザンスか」
「お前の言うことなんざ、一々まともに聞いてたら夜が明けらぁ」
「そ、そんなことないザンス!」
「んじゃ、言ってみろよ」

髪の色と同じくらい、頬が赤く染まっている。
口はまごつき、音はぐるぐるとわだかまったまま。
楽しい、楽しい。
こいつをからかうのは、とても、楽しい。

「…ミー、に」
「おうよ」

ニヤニヤ、口角の端は上がりっぱなし。
意地の悪い笑みが浮かんでいることだろう。
直す気など、サラサラない。

「キ、」
「キ?」

目が逸れる、逃すかと顎を掴み、正面で固定。
視線だけはあちらこちらに逸れるものの、体は手は、そのままの位置。
手は胸板、体は馬乗り。

「キ、キ、キキキスを」
「を?」
「…しろ、ザンス」
「色気が足りねぇなぁ、ま、今回だけな」
「うっさいザンス!早くしろ!」

顔は既に茹できっている。
ああ愉快。
お綺麗な顔が羞恥に歪むのは、何度見ても飽きない。
普段はこいつの我儘を聞いてやってるんだ。
これくらい、役得でいいダロ?

「仰せのままに?お嬢様」

胸板に爪を立てられたが、その程度では怯む気もない。
どうせ明日は非番の日。
今夜はたっぷり可愛がってやろう。

「…最悪ザンス」
「へへっ、俺ァはそうは思わねぇぜ?」

減らず口を鎮める為に、思いっきり深い口付けを。
夜はまだ始まったばかり。

2013/04/23
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