*ロングアーム長官がシーメール
*雰囲気だけエロい…んじゃないかな



夜の帳はとっくに降りている。
それでも目だけは異様に冴えわたって、対象に粘つく視線を送っていた。
対象とは、服を脱いでいく好意を抱いている相手…ロングアーム長官だ。
中性的な容姿を誇り、その朗らかな笑顔と物腰柔らかい態度から男女を問わずお声がかかる人。
僕も密かに憧れていた。
そんな人が、目の前でストリップを繰り広げている。
注視しない男なんて居ないだろう。

普段は厚ぼったい服で隠されている四肢が、少しずつ露わになっていく様は、想像していたよりも艶っぽい。
その腕や足が存外に細いことは知っていた。
ずっと見てたんだ、彼のことを。
彼のちょっとした動作や、服の裾から覗くものから体型を明確に推し量れる程度には。

ああ、もう彼はシャツと下着だけになってしまった。
僕のことを流し見ながら、一つずつ外されていくボタン。
焦らすようなその仕草は手馴れてて、彼が見目ほど純情ではないことが想像できた。
でもそのギャップが、正直たまらない。

「もう。そんなに見詰められては、照れちゃいますよ」

ちっともそうは思ってないと分かる声で、そんなことを言われてしまっては、唾を飲み込むのを我慢できなかった。
明らかに僕は、欲情してる。

「ふふ、ブラーは本当に可愛いですね」

上下の下着と、白い素足を晒して寝台の端に座る僕ににじり寄るロングアーム長官は、娼婦みたいだった。
もっとも、僕はそんな人に会ったことはないけど。
一応、映像では見たことある。
同期や先輩に無理やり見せられたことが何回かあった。
だけど、そのどれよりも、目の前の彼が一番、僕の心を持っていく。

「ほぉら、可愛いお顔が真っ赤」

人差し指で、顎をくいっと持ち上げられ、自然と視線がかち合う。
ロングアーム長官はにっこりと、いつものように笑っていた。
でも僕には、それが強烈な甘い毒に思えて仕方なかった。
僕を絡め取ろうとする、甘いあまい毒。

「ねぇブラー」
「っうぇ、は、はい」
「ブラーは、私に挿れたいですか?それとも、挿れられたいですか?」

ぼっ、頭に血がのぼる。
顔は自分でも分かるくらいに熱くなって、心臓は早鐘のようだ。
手が震える、脳裏には、映像の女性のように乱れるロングアーム長官、が。

「あ、あ…ロングアーム、長官…ぼ、ぼく…」
「…もしかして、初めて?」

きょとりと首を傾げながら聞いてくるロングアーム長官と、目が合わせられなかった。
折角閨に誘ってもらったのに、相手が童貞なんて、さぞがっかりしたことだろう。
ああ、嫌われたらどうしよう。
熱はどんどん引いていって、視界は見えているはずなのに何も映していない。

「君は本当に可愛いですね」

ぴたり、と長官の体が、腕に絡みついてきた。
小さいが存在を主張する胸が腕にあたる。
思わぬ展開に、目を白黒させた。
細い指が僕の後頭部に回り、顔を包み込むように寄せられて、再び視線がかち合う。
彼が身じろぐ度に、彼の男の部分と女の部分が僕の体に当たって、倒錯的な気分に、なる。

「初めてなら、挿入する快感を知りたいですよね?男の子ですもん」

何かに導かれるように、首を縦に落とす。
ロングアーム長官は、僕の目をしっかり見つめて、言った。

「私でいいなら、ブラーの初めてをください」

ああ、プライマスよ!

「教えてあげますよ、全部」

うっそりと笑うロングアーム長官に、僕はもう、理性がもたなかった。












「ちょろいな、本当に」
2013/04/09
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -