本当は、誰よりも卑屈なのは己だと。サンダークラッカーは知っていた。他の者達はスタースクリームが、と言う。だが、違うのだ、本当は。スタースクリームの様に頭がキレることもなく。スカイワープのように特殊能力を持つわけでもなく。ただ音速で飛べること。それしか出来ない己こそ、本当は一番の役立たずだと、知っている。おまけに厭世的で、無気力だ。同じ型の者達が居るから、ここに居る。

 一応、メガトロン様は素晴らしいと思う。ただ、スタースクリームのように出し抜こうとおもったり、スカイワープのように盲信することも出来ない。宇宙を征服してその次は、いったいどうするのだろうという、その先が分からないからだ。箱庭でも作るのだろうか。もし征服出来たとしよう。全てを暴力で支配しても、すぐにサイバトロンのような敵対組織が生まれると、俺は思ってしまうのだ。革命軍、レジスタンスとして、彼らは戦うだろう。今の俺達のように。そんな世界で、やっと戦いを終えたというのにまた戦うはめになるなど、最悪だ。

 そしてそんなことを口に出せば、死刑あるいは私刑は免れない。今まで以上に前線に駆り出され、墜落してもリペアなし。そんな未来、真っ平御免である。だから己は輝かしい兄弟機の影に隠れ、ひっそりと生きている。目立たぬように、死なないように。事勿れと言われようとも知ったことか。卑屈だと言ったろう。

 そうやって己は生きてきた。衝撃波を操り離陸時に爆音を消せることも、隠して。データとしては存在しているのだろうが、俺や兄弟機達がそれを話題に出したことはない。だから、なかったことになっている。これでいい。何も怖いことも起こらず、ただ生きていけたら。ただ飛ぶことが出来たら。

 俺は、これでいいんだ。




「コノ俺ガ、ソンナコトヲ許ス訳ガナイダロウ。馬鹿メ」

2013/02/06
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