「アストロぉ…」
「……」
「ごめんって…」
「………」
「なぁ…アストロぉ…」

そっぽを向くアストロトレインに、ブリッツウィングは何度も何度も声をかけるが、アストロはブリッツの方を見向きもしない。
黙りこくるアストロに、ブリッツは情けない声を出して気を引こうともがいていた。

「なぁ、こっち向いてくれよ…俺、なんかしたか…?」
「…なんかしたか、だと?」

ぐるり、怒りの火が灯った瞳が、ブリッツを射抜く。
やっと顔をこちらに向けてくれたと、喜ぶことも出来ないほどの迫力だった。
さしものブリッツも、怯えを覚える。

「お前は、気付いてねぇのか」
「な、なっ、なに、が?」
「いつでもへらへらへらへらしやがって。俺がどんな気持ちでお前を、」

そこまで言って、アストロは言い淀み、また明後日の方向を向いた。
今度は体ごと。
不安になり顔を覗き込めば、鬼のような形相があった。
ブリッツ以外なら、その場から逃げだすほどの恐ろしさだ。
ただ、ブリッツ自身は、これが照れ隠しだと知っている。

「アストロ…?」
「あー…くそ…」
「なぁ、俺、馬鹿だからちゃんと言ってくれなきゃ、分かんねぇよ…」

ぎゅっと、アストロの手を握る。
鬼の形相が、ぴくりとだけ動いた。

「…俺はな、お前が誰に対しても愛想振りまくのが、嫌なんだよ」
「…振りまいてねぇぞ?」
「そう見えるって言ってんだよ! …お前は、俺だけ見てりゃいいんだ」
「見てるぞ」

手が、勢いよく引かれて、つんのめる。
それを、アストロは難なく受け止め、真正面から見据えた。

「言ったな」

鬼の形相が、獲物を狩る獣になった。
ぎらりと輝くオプティック。
獣の本能が舌なめずりを始めている。

「本当だろうな?」
「当たり前だろ」
「ビルドロンや、アメフトってやつにもか?」
「俺が好きなのは、アストロだけだぜ?」

信じてくれよ、そう願いながら見上げる先には、アストロの瞳しかない。

「フフン、知ってらぁ」

首のケーブルに噛みつかれ、ぴりりとした痛みが走る。このまま食われるのか、なんて、思ったり。

「俺以外の野郎を、見んじゃねぇぞ」

馬鹿な俺でも、アストロが嫉妬していたのだと分かった。
ブリッツウィングは、やっと理解した。
2013/04/09
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