君との時間 | ナノ









次の日、その日は体育祭があった。私たちの学年は全員参加で二人三脚をやるだけど、私は今まで奇数のため先生とペアを組んでいた。しかし、総悟がやってきたと言うわけで私は総悟とペアになった。



***


『総悟〜私たち何にも練習してないよね?行けるかなぁ・・本番』

「大丈夫でさ。ノリで行きやしょう!」

『う、うん・・』


ノリとか私、運動音痴なんですけど!!ノリで行けるはずないじゃないっ。しかも総悟、運動神経良さそうだし・・はぁ。これならいっそ休んじゃえば良かったかな



***


――次は高校2年生によるリレーです――

アナウンスが鳴り響く。


二人三脚の前にリレーがあることを忘れていた。私はダッシュで集合場所まで走る。

『あれ、総悟行かないの?』


木下に立って動かない総悟に声をかけた。

「俺ァ、転入したばっかなんで余った競技に出るんでさ。二人三脚と騎馬戦に」

『そっかぁ。私、今からだから頑張るね!』

「じゃあ、桃子の事応援しまさァ!!」
『あはは、ありがとう。足、遅いけどね』

そう言って、私は再び集合場所へ向かった。



***


只今、藤森桃子現在4人中4位で御座います!


『・・うぬぬ!』


うめき声をあげてるわりには全く順位変わらず。そんな時、総悟の声が耳に届いた。

「頑張れー!桃子!!ぶっ飛ばしちまいなアァァ」


あのいつもクールな総悟が声を張り上げてるなんて、なんだか吹き出してしまいそう
私は必死に足と手を動かした。


『うおりゃあああ!!』


後ゴールまで少しだった。

そして私は、ひとり追い抜いて3位で次の子にバトンを渡した。



***


リレーが終わった後、私は真っ先に総悟の元へと向かった。


『総悟!ほんとに応援ありがと。おかげで人生初の3位だよ』

「ぷっ。3位が最高ってやっぱ面白いですねィ」


――次は二人三脚です――


アナウンスが再び鳴り響く。


『あ、私たちだね。行こっか』


正直かなり不安である。総悟とは一度も練習していない。ぶっつけ本番と言うのはこれのことなんだと私は思った



***


出番も間近で、私は究極に緊張していた。あがり症のため足が震える


『そ、総悟は緊張しないの?』

「俺ァ全然。もしかして、桃子緊張してるんですかィ?」

『わっ・・悪い?!』

「別に・・悪きゃねーけど」


総悟はそう言った後、私の手をギュッと握ってくれた



「こうやると緊張が和らぐって、姉上が言ってたんでさ」


ありがと、そう御礼を言うつもりだったのになんだか恥ずかしくて顔がきっとゆでだこみたいになっているだろうから私はこくんと頷き顔を下に背けた。


***


とうとう順番がやってきて、銃声でスタートする。


「『せーのっ1!2!・・・』」


初めは順調だった。だけど私の体力不足で、私と総悟との距離がほんの少し開く。

ほんの少しだけ開いたその時だった


『・・うおわ!』


私が転けると総悟も転けた。総悟が私の上にかぶさって、顔の距離が物凄く近かった

「あっぶねーや。大丈夫ですかィ?桃子(あのままキスしてたら、いきなり戻るところでしたねィ)」


そう言いながら繋がっている足のリボンを取る総悟。間近でみた総悟の顔は凄く複雑だった。


リボンを取ってから何故か私のポニーテールの所に結ぶ総悟。あれ?二人三脚やんないの?


立ち上がろうとした直後足に鋭い痛みが走った。膝小僧から真っ赤な血がだらりと垂れている。こけた時にすりむいたんだろう。


総悟はしゃがんで「乗れよ」と合図してくるが・・・


『私、重いし!血ついちゃうよ?』

「血なんて桃子のなら構わねーや。それより早く洗いに・・だから乗りなせェ」


私は仕方なく総悟の背中にまたがり、おんぶしてもらう。

凄いスピードで走るから私は落っこちそうになってまたつかまる。


実際ならゴール地点のところもぶっ飛ばして蛇口があるところまで走った。



***

手洗い場まで来ると、総悟はストンと降ろしてくれる。


『あ・・ありがとう!』

「いや、大体俺のせいでさァ・・すまねェ。ティッシュとか持ってやせん?」


ティッシュかぁ・・制服のポケットになら入ってたけど今ないや。


私は首を左右に振る。


「そうかィ。・・・お?ハンカチがありやした!」


そう言ってハンカチを濡らす総悟。紺色のハンカチが水に濡れて黒に近い色になる。


『・・きゃ?!』


膝小僧の所がひんやりとする。総悟が傷口についた汚れを取ってくれる


「ちょっと、しみるかもしれやせんが・・我慢してくだせェ」

『う、ん。いった・・』


何度か拭いてから、また水に濡らしてキュッと傷の所に結んでくれる


『ありがとね』

「お、おう」


少し照れた総悟が可愛かった。


***


―次は騎馬戦です―


「お、行かねーと」


あ、そうか。総悟は騎馬戦に出るんだった

『頑張ってね!応援いっぱいするから』

「任しなせェ!!」


そう言って去っていった総悟の背中は凛々しかった。


***


騎馬戦の真っ只中、総悟はとてつもなく強かった。どんどん敵のハチマキを振り取っていく。


『総悟ーッ!がんばれ!!』


私も負けじと応援する。一瞬ハチマキを取るのが早くなったような気がした。


***


結果は総悟の活躍により私たち赤組の圧勝だった。


『総悟!お疲れ様!!』

「あぁ、騎馬戦なんざ楽勝でィ。・・・後、応援ありがと・・っ」


頬をポリポリ掻いて言う総悟はなんだか新鮮だった。


『いや、総悟の実力だよ!かっこよかったよ・・っ』


私は下を向いて呟いた。とても恥ずかしかったから。


「・・っ、もういい!行きやしょ!!」


あれ?顔赤いよね?まぁいいか・・


『うん!!』


そうして私は総悟の元へ駆け寄るのだった。





いい思い出になった体育祭だった。