※多義視点。高校生設定
原作とは違い青砥が日本にいる


四年前のワールドカップも、この部屋で青砥と一緒に見たことを思い出す。
伸び続けていた身長も 190センチを目前にしてようやく止まったぼくとは対照的に、青砥の身長はゆっくりと伸びて 160センチをいくつか過ぎた辺りで頭打ちとなったようだ。四年前とほぼ同じ身長差、同じ配置のリビング。変わってしまったのは、ぼくの中身だ。



Un pervertido de amo



音も立てずにリビングに入ってきた青砥は、袖の余っている長袖シャツにハーフパンツ姿だった。シャワーを浴びたばかりの金髪から垂れた水滴が、首に掛けられたタオルに吸い込まれる。
テレビに映し出されているワールドカップの緒戦は一方的な試合になっており、青砥はそれを一瞥すると興味無さ気にソファに寝転んだ。仰向けになった腹の上にはサッカーボールを乗せ、両手で弄んでいる。投げ出された右足が、床に敷かれたカーペットの上に直接座り込んだぼくの横で揺れた。


青砥の足が好きだ。すらりと伸びた指と、丁寧に切り揃えられた爪。しなやかに動く足首からは、器用なボール捌きが生まれる。
日に焼けることのない白い足首を掴んで固定したまま、唇を寄せた。爪先を掠めた後に、口内に親指を含む。舌で爪と皮膚の間をなぞると、青砥が小さく声を漏らした。けれどそれだけで、抵抗も拒絶もないからそのまま右足を食み続ける。
顔を上げれば、潤んだ瞳でサッカーボールに爪をたてる青砥が目に入った。普段から渋い表情をしている子の、こんな顔を見るのは珍しい。扇情的だと思う。



虎太が青砥に告白した、と竜持から聞いた。虎太が青砥を好きなんだろうなっていうのは、それはもう四年前から兆候はあったわけだし今更驚くことじゃない。けれど、何故か胸がざわつくのだ。


ガリ、と踝に歯をたてて、薄く残った歯型に沿って舌を這わせる。


青砥は大事な友達で、守りたい存在だった。母親みたいな目で見てる、と指摘されたこともあるから、これは親愛の情だと思っていた。


足の甲から爪先へとリップ音をたてながら口付けを落とす。


だけど、違う。青砥の体に歯型を残し、全身を愛撫し、ぼくだけのものにしたいと思うなんて。これは恋や愛なんて綺麗なものじゃない。こんな汚い気持ちがあるなんて、知りたくなかった。
だから、青砥が虎太と付き合ってしまえばいいのに、と考える。虎太以外でもいい。青砥を好きなやつなんていっぱいいる。
とりあえず、早くぼくから離れてほしい。胸に沈んでいる醜い気持ちを、これ以上行動に移してしまう前に。どんどん汚くなっていくぼくが、青砥を壊してしまわないうちに。



「タギー、」

耳に心地よいアルトで名前を呼ばれた。声変わりも緩やかだった青砥が、サッカーボールから離した手をぼくに向ける。細くて白い綺麗なその手を、握ってと言いたげな碧い瞳も見なかったふりをして、ぼくは掴んだままの右足に視線を落とした。




2012.05.27

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