※ブン太(18)、ジャッカル(17)、雅治(14) |
二年の教室にやって来たブン太は、大きく喚く携帯を耳から出来るだけ離しながらジャッカルに英和辞典を返した。 「さんきゅ、マジで助かった」 「どういたしまして。それより、電話どうしたんだ?」 電波の向こう側から聞こえてくる声に肩を竦めて、ブン太は終話ボタンを押す。 「雅治からだよ。弁当がすごいことになってたんだってさ」 「すごいこと?」 ジャッカルは、食べ終えたばかりの弁当を思い浮かべる。母である精市が作ってくれたそれは、いつも通り彩り豊かで美味しいものだった。 「白米の上一面に、桜でんぶのハートマークが乱舞してたらしいぜ」 あぁ、とジャッカルは昨日のことを思い出す。反抗期真っ盛りの弟が些細なことから精市と喧嘩をし、今日の朝も全く口を聞かずに学校へ行ったことを。 「母さんと喧嘩なんかするからだよな」 「そうだな」 精市と喧嘩したことのない二人は互いに頷き合った。そして、ほぼ同時に笑い出す。 「弁当箱開けた瞬間の雅治の顔見たかった!」 「母さんの勝ち誇った顔が目に浮かぶな!」 一頻り笑った後で、家に帰ったら雅治を宥めて一緒に精市に謝ってやろう、と兄たちは決めたのだった。 |