※ブン太5歳


「おかあさん、ごはんなあに?」

とてとてとやって来たブン太が、くりくりとした目で見上げてくるのに微笑むと、精市は次男をひょいと抱きあげた。
調理台に置かれたキッチンバットには、下準備の済んだ海老が並んでいる。

「夕ご飯は、海老フライだよ」

「おれ、ぺたぺたする!」

「手伝ってくれるのかい?」

うん、と頷くブン太を下ろすと、精市は台所の床に新聞紙を数枚広げ、その上に、薄力粉、溶き卵、パン粉がそれぞれ入ったバットを並べた。ブン太には子供用のエプロンをつけてやり、最後に調理台から海老が並んだバットを下ろす。

「こうやって、海老さんに洋服を着せるんだよ」

海老を一匹手に持ったブン太は、見よう見まねで衣を付けていく。その瞳がきらきらと輝いているのを見て、将来有望だな、と精市は微笑ましく思った。




「これ、おれがつくった!」

そう言って海老フライを差し出すブン太に、弦一郎はほう、と感心する。差し出されていたそれを一口かじると、美味いぞ、とブン太の頭を撫でた。
隣で食べていた蓮二も、それに頷く。
美味しいね、とにっこり笑う精市に、口いっぱいに海老フライを頬張るジャッカルを見て、ブン太は満足気に自分の海老フライを食べ始めた。





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