蝉の声が響き、青々とした空が頭上に広がる。
剣の強い若者たちに助けられてから、より一層剣術に励んだ俺は、尽忠報国の志をもつ壬生浪士組という集団が隊士を募集しているという噂を耳にし、ここ壬生まで来た。たまたま道中で出会った島田と尾形も目的は同じのようで、共に屯所の前に立つ。
巨漢の島田が、見た目通りの大きな声で、ごめんください、と呼びかけた。



【文久三年 夏】



思いがけずあっさりと入隊できた俺たちは、割り当てられた部屋に向かう前に、手足を洗おうと井戸へ向かう。

「京の夏は暑かねぇ」

肥後訛りの尾形の言葉に、島田が頷く。俺も同意しようとしたのだが、視線の先に見知った人たちを見つけたため、それはできなかった。

「沖田さん!」

名を呼ぶと、沖田さんはこちらまで駆けてくる。後を追って、藤堂さんと斎藤さんもやって来た。

「山野さん、お久しぶりですね」

「はい。その節はどうもありがとうございました」

名前を覚えてくれていたことを嬉しく思いながら、頭を下げる。
大したことはしていませんよ、と沖田さんは笑った。それにつられて、俺も笑う。

「もしかして、入隊されたんですか?」

そう問う藤堂さんに頷きを返して、改めて自己紹介をした。ついでに、隣で成り行きを見守っていた島田と尾形も紹介する。
同じように沖田さんたちも名を名乗った。
以前から気になっていた歳を訊くと、三人とも俺より三つ下だという。沖田さんが、藤堂さん、斎藤さんと同じ年齢であることに驚く。斎藤さんは落ち着いているから、もしかしたら俺より年上かもしれない、と思っていたくらいだ。
また後で会いましょう、と去っていく三人を見送り、俺たちはようやく井戸へと向かった。




「今日から、よろしくお願いしますね」

間抜けな顔をしているだろう俺と島田に向かって、沖田さん、いや、沖田先生は笑う。
井戸端で別れてから数刻もたたないうちに組分けが明らかにされ、一番隊に配属されたのはいいが、その組長というのが沖田先生だったのだ。てっきり、沖田先生も平隊士だと思っていたため、少なからず驚いてしまった。
後で聞いた話によると、沖田先生は浪士組結成時の一員であり、また剣の腕も隊内で一、二を争うということだ。


島田と共に再び挨拶して、別の隊に配属された尾形と落ち合う。
外には遅い夕闇が降りて、虫の音が聞こえ始めていた。








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