ぽとり、ぽとりと、真っ赤な花弁がこぼれ落ちた。


夢の話




夢の中は、自分の手も見えないほどの闇だ。
どこまでも広く、終わりのない暗闇に、毎夜毎夜捕らわれる。
後ろを振り返ると、満面の黒に赤い花が咲き乱れていた。
自分の存在も虚ろな世界で、紅い彼岸花だけが目に映る。



前後も分からなくなり、どうすればいいのか途方に暮れる私の周りで、どこまでもどこまでも、彼岸花は咲き続けている。


こほ、と咳をもらすと、はらはらと、真っ赤な花弁が舞い落ちた。
喉から生まれた咳が、彼岸花の花弁となり、足元に重なっていく。
ぽとり、ぽとり、と音を響かせて、赤い、紅い、朱い、花弁が降り積もる。


血のように濃い深紅と、呑みこまれそうな闇が、どこまでも続いている。





2011.10.03.


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