間に空いた、拳三つ以上の距離。それが二人の間においては至近距離の限界だった。
右側に並んで歩く彼女の左手は肩にかけた鞄の取っ手を握り、どうあっても隙を残してはくれないらしい。
最後となる他愛のない会話に、今の今までそうだったように気の利いた言葉一つ返せずにいるこちらの心境など、意に介せずに彼女は笑った。
二年間の時を共に過ごしていても、これ以上のものは見たことがなかったくらいに。
さようなら、と。
耳朶に残って何度も繰り返されるその声に、逃げるように目蓋を閉じた僕を、君は知らない。
終わりの始まりいつか、この手を伸ばしていれば、結末は変わっていたのだろうか。
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