シリーズ | ナノ


※W・Cキセキ勢揃いシーン






高校に入って大幅に変わったこと。
友達が、減った。



(しかし笑い事じゃないなー…)



キセキの世代キャプテンというか、寧ろもうキセキの天才児な赤司征十郎と何故か親しくなって、半年は過ぎた。
初期に多くあった嫌がらせも私の反応の悪さに諦めが勝ったのか、若しくは征十郎が裏で何かしらの手を出したのか、今ではほとんど無くなっている。

部活内でもどうしても一番会話することになる所為で晴れて(?)赤司係という称号をいただいてしまった私は、ただ今その征十郎を探してW・C会場の敷地内を走り回っていた。

マネージャーの脚力を鍛えてどうするんだろうか。



「あーもー、どこいんのせーじゅーろぉーっ」



先輩達も、何も私だけに捜索役を押し付けなくてもいいじゃないか。
別に征十郎だって私じゃなくても呼ばれたら帰ってくるよ…!

ちょっとばかり弱音を吐きたくなりながら、それでも与えられた役割を放棄することはできず。
周囲を注意深く眺めながらスピードをあげようとしたところで、少し遠い前方に真っ赤な髪を見つけてほっと息を吐いた。



「やっと見つけたぁあ征十郎っ!」



洛山のユニフォームを確認して追い付き、その腕をがっしと掴んでから、もう片方の手を膝について荒くなった息を整える。

ああもう本当にしんどかった、と思いながら顔を上げたところで、視界に飛び込んできたカラフルな髪色にあら?、と固まりかける。
やけに派手な外見の人間が揃っているが、もしかしてお話中のところを邪魔してしまったのだろうか。

一気に集まった視線に思わず一歩後ずさりかけたところで、耳に馴染んだ声に名前を呼ばれてなんとか踏みとどまった。



「なまえ? どうした?」

「え、いや、話中だったならごめん、先輩達に呼んでくるよう頼まれ‥て……っえええ征十郎?」

「何だ」

「イケメンが際立ってるよ!? え、ちょっ‥どうしたの前髪…」



視界スッキリ、魅惑のオッドアイが強調されてしまっている征十郎の姿にわたわたと無意味にも手を動かしてしまう。
邪魔だったから切った、とそれはもうあっさりと答えてくれた彼はさすがの赤司様だった。

たまにやることがワイルドすぎやしませんか、あなた…。



「言えば切ってあげたのに…」

「…なら次からそうするか」

「あと、その手の鋏は誰のでそこにいる怪我してる人と関連性は?」

「鋏は緑間のものだな。関連性はまぁ、ある」

「征十郎…君って人は……」



緑間、と指差された先に目をやれば、緑色の髪の男子がびくりと肩を震わせる。
訝しげな視線に晒されながら私はとりあえずポケットから出したハンカチで僅かに刃に着いた血を拭って、征十郎の手から引き抜いてその彼に差し出した。



「ご迷惑をおかけしました…」

「い、いや…ああ」



若干挙動不審な受け答えだったけれど、それも仕方がないことだろう。
それからもう一つ、どこで何をしでかすか分からない征十郎の為に持ち歩いている絆創膏を胸ポケットから引き出して、特徴的な眉の男子に差し出しておいた。



「驚かせてすみません。よければ使ってください」

「お、おう…」



あとはまぁ天才問題児を連れ帰れば任務終了か、と溜息を吐きながら振り返ったところで、絶対零度の瞳でこちらを見下ろす征十郎と目が合ってしまった。

何故に不機嫌…。
周囲の派手な面子の顔色が若干悪くなってるのに気づいているのか彼は。…気づいてても気にしないか。



「僕以外に媚を売って楽しいか、なまえ」

「ええ? 売ってないよ。征十郎にも売ってないし」

「……」

「怖い顔しないでよ…ね、ほら、先輩達待ってるから帰ろう?」



イケメンが怒ると迫力があり過ぎていけない。しかもそれが征十郎だと笑い話にもならない。
何が不愉快だったのかは知らないけれど放置することもできないので、困りながらも右手を差し出すと一回り大きな左手にぎゅう、と握り締められた。

力強過ぎて痛い…けど、ここは黙って耐えるところだ。
少しだけ機嫌が回復したらしい征十郎は、そろそろ帰ることを周囲の面々に伝えた。

どうやら彼らを呼び出したのは征十郎の方だったらしく色黒な男子が喚いていたけれど、生憎うちのキャプテンがそんな文句を気にする筈もなく。
次は戦う時に会おう、などと綺麗に締め括って踵を返した彼にばれないよう、私はとりあえず誰かも分からない集団にこっそり頭を下げておいたのだった。






続々・観察対象絶対君主




そしてその時の錚々たる顔触れがキセキの世代だったと知らされるのは、午後の試合が終わった頃のこと。



(えっ…あの征十郎に負けず劣らず派手だった人達がキセキの世代だったの?)
(ああ…それにしても涼太はともかく、真太郎に敦…テツヤもか。こうも同じ内容のメールが来ると鬱陶しいな)
(キセキの人達? 何かの用事?)
(詮索だ。僕達の関係が余程気になるらしい)
(関係って…キャプテンとマネージャーでしょ)
(…いっそ本当にしてしまうか)
(何だろ…何だか分かんないけどとんでもない決心をされたような気がする…)
20120731. 

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