「ハグ一回30秒につき一日のストレスの三分の一は解消される」

「ほうほう」

「ちなみにこれはドーパミン、オキシトシン、セロトニンが分泌されるからだ」

「なるほどね!」

「ここからが本題なわけだけどな…お前はオレが何を言いたいか、解るだろうなぁ?」



にやあ、と口元を歪める花宮くんに、私は胸を張って手を挙げた。



「花宮くん! はぐって何ですか! 歯茎の略ですか!」



次の瞬間に襲ってきたのは容赦なく降り下ろされた辞書の角での強打だった。



「小学校からやり直せバァッッカ!!」

「あべしっ!!」



あまりの痛みに頭を押さえてしゃがみこみ、悶える。
な、何で殴られたのかな私…ていうか花宮くん今どこから辞書出したの…マジシャンか。

うおおお…と呻きながら見上げた花宮くんの目は南極の氷も真っ青な冷え冷えとしたものだった。



「バカかてめぇ。バカだったな。理解できると思ったオレも相当だったけどな」

「おおお…? 歯茎の略じゃないの?」

「寧ろ何でそうなんだよ。歯茎は名詞。さっきの説明はどう考えたって動詞。歯茎をどうしたらストレス解消になるんだああ? 説明してみろ」

「歯茎って揉みほぐすといいんじゃなかったっけ…」

「ストレス関係ねぇよ」

「あたたたたっ!」



ついさっき強打された部分を更に角でごりごりと擦られて地味に痛い! うら若き乙女の髪が剥げちゃうよ!!

花宮くんは一体何を怒っているんだろうか。意味が解らなすぎる。
おやめください花宮様あーれー!、と叫ぶとすぐに辞書はどかしてもらえたけれど、更に見下すような目付きを向けられた。私のガラスハートが傷つくよ花宮くん。



「それで…結局はぐってなんなの?」

「…もういい黙れ」

「ええっ!? よくないよ気になるよはぐって何さ!? 何なのさ!?」

「うっせぇよ!…立ち上がって両手広げてみろ」

「さー! いえっさ!!…おおお?」



言われた通りに立ち上がってみると肩に手を置かれてぐるりと180度回転させられた。
かと思えば突然両脇から出てきた腕に背後からぎゅっと締められて、耳元で花宮くんの声が響いた。



「これがハグだろ」



おおお! なるほどね!!

一つ賢くなれた!、と掌に拳を下ろした瞬間、後頭部に渾身の頭突きが炸裂した。







悪童苦戦




(マジで信じらんねぇどんだけバカっつかバカ以前の問題だろお前…ねぇよ。有り得ねぇ)
(いやはや照れますなァ)
(このまま絞め殺してやろうか)
(早まるな花宮くん君にはまだ未来があるよ!)
(っっ…この、バァアアカ!!)
20120816. 
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