現役女子中学生ってすごい。

膝上15センチ以上はいきそうなスカートを翻しながら囂しくじゃれ合う中学生達の後ろを、とろとろと追いかけながら私は思った。



(若いなー…)



もう私くらいの歳になれば、生足をさらけ出すことイコール可愛い、という法則からは抜け出してしまう。
女の身体は武器ではあるが、正しく扱ってこその武器だ。チラリズムの美学とシルエットの美しさに拘れば、そう簡単に生足を晒すなんてことは邪道。これは私の拘りだけれど、譲れないところである。

というわけで、私のスカートは膝上5センチ程度に留めてある。女子の聖域をそう簡単に拝ませないところにロマンがあるんです。



(それにしても汚れの目立ちそうな制服だなー)



白って。
自分も着ていて何だが、登校中の生徒を目にすると余計に思う。
白い制服なんて、見たのも初めてな気がするな、と。
そしてそんなどうでもいいことを考えながら辿り着いたらしい中学校は、やはり私の期待を裏切り、本来通っていたはずの学校の外観とは造りが大きく異なっていた。

ああ…頭がおかしくなりそうだわ。



「帝光中学校…ね」



それなりに古びた校門に飾られた文字を確認して、溜息を吐く。
やっぱり、私の人生は中途半端にリセットされてしまったのだろうか。

だったら私は、これから出逢うはずの知人には逢えない…?
そんなのってちょっと酷すぎやしませんか?



(考えたって何も変わらないけど…)



何でこんな理不尽な、意味の解らない事態に陥っているのか。
深く考えると憂鬱な気分に沈みそうで、私は仕方なしに両頬をぱちりと叩いた。

落ち込んでいたって、どうしようもないし。



「とりあえず…学内地図はどこじゃろなーっと」



迷いも戸惑いも拭えないが、突っ立っていても誰も助けてはくれない。
気分を入れ換えるよう大きく深呼吸して、スクールバッグを肩にかけ直した。

今はとりあえず、職員玄関と職員室を探すのが私のやるべきことだ。






 *




無事に職員玄関は見つけて、校舎に入ることはできた。
そして直ぐに階段横の壁に置かれた学内地図も見つけて、職員室の場所も確かめていざ参らん、と気合いを入れながら通り道にある生徒玄関を過ぎようとした時、足下から点々と続くそれを見つけて、立ち止まってしまった。



「…駄菓子?」



低価格で人気の定番スナック菓子が、廊下に落ちている。しかも、罠か何かのように続いている。
他の生徒達は気付いていない…とは思えないが、気にする様子はなくスルーしまくっていた。

この学校では道にお菓子が落ちているのが、日常茶飯事か何かなの?

思わずそんな馬鹿なことを考えながら一本、足下のものを拾えば、見たことのあるようなキャラクターと共にまいう棒イカスミ鱈子味、と書いてあった。
うまい棒じゃないのかよ。



(なんか…若干何か違う…)



私が今まで過ごしてきた世界にこんな名称のお菓子はなかった。
というかイカスミ鱈子ってイカスミが鱈子を凌駕しそうなんだけど、一体どんな味なのよ…地味に気になるぞ。

これが此処ではよくある光景なのかもしれないし、気にする方が負けなのかもしれないけれど。



「……拾うか」



塵も積もれば山になる。せっかく買った大量のお菓子を落として潰されたりしたら、虚しいだろう。
誰のものかは分からないけれど、辿っていけば持ち主に返せるかもしれないし。

仕方なく私は点々と続くまいう棒という駄菓子を、中身の少ないスクールバッグに一本一本放り込みながら足を進めたのだった。

それが私のこれからを決める、出逢いの切っ掛けであるとも知らずに。







ある日、学校の中




森のくまさんならぬ紫色の巨人とエンカウントするまで、あと数分。

20130122. 



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