※赤司さんが若干キャラ崩壊です





それも所謂、運命の出逢いというものなのかもしれない。



「なまえ」



そわそわと、見た目からは分からないし慣れなければ気づけない程度に、周囲に花を飛ばしまくるそいつが声をかけてくるのは想定内。
無機物のように滅多に表情を変えないその顔が目立たず綻んでいることに気づく人間は、この場にはいない。というか、私以外にいない。

皆まで言うな、と掌を翳し、もう片方の手に持っていた期間限定パッケージのペットボトルを差し出せば、宝石のようなオッドアイが分かりやすく煌めいた。



「っ…!」

「赤司、顔、顔」

「っ、すまない」



差し出されたそれを受けとる瞬間ふわあ、と笑みを溢しそうになる顔を指で指摘すれば、反射的に口許を覆い隠す。
そこまで反応されると、悪い気はしなくとも複雑な思いにもなる。

コンビニで見つけた限定のパッケージデザインの紅茶は、未開封。元々私が飲むために買ったわけではなく、目にした瞬間にこういうの好きだよなぁ…と、こいつの顔が浮かんでしまったのが原因で手に入れてきたものだ。

何かと目敏い赤司のことだから、鞄から軽く覗かせておけばすぐに気がつくだろうとは思ったけれど。
我が高校きっての天才がペットボトル一つで幸せオーラを放てるとは…なんだかこう、虚しい気分になったりもしたりなんかして。自分の所為だけど。



「…好きだねぇ、そーゆーの」

「可愛いだろう」

「まぁ可愛いけどさ」



寧ろそんなもんに瞳を輝かせるお前が可愛いわ。

童顔も相俟ってひどく可愛らしい赤司を机に頬杖をつきながら眺める私…。確実に女子的レベルが逆位置にあるのもいつものことで。

しかしこの可愛いもの好きの赤司が本気になれば勉強もスポーツも右に並ぶものはないというのだから、世の中は解らない。
偶然部活動を覗く機会があり、その鬼主将っぷりを見せつけられた日には多重人格かとさえ疑ったくらいだ。



(天才過ぎてネジ外れたのかね)



顔も頭も及第点以上だというのに、なんとも勿体ない。

暫くパッケージに夢中になっていた赤司は、私の視線に気づくとはっと目を丸くする。
それから鞄を探り始めたかと思うと、綺麗に畳まれたシャツを差し出してきた。



「この間のシャツ、ボタンは付けておいたぞ」



それはつい最近、友人の髪が引っ掛かってしまったのでボタンごと切ってしまっていた制服のシャツで。
裁縫系統がとにかく苦手な私を見兼ねて、代わりにボタンを縫い付けてくれると預かられていたものだった。



「あ、ありがと…ん?」



本当に女子として終わってるな…と思いつつ受けとってすぐ、違和感を感じて眉を寄せる。
いや、違和感とかいう話じゃない。どう見てもおかしい。



「赤司くんよ」

「何だ?」

「何故ボタンの糸がレインボーな感じに変色しているのだろうか」

「可愛いだろう」



え? 君何してくれてんの?

ドヤァ、と言うよりは誉めてほしげに見つめてくる赤司に直接そんな言葉を吐き出すこともできず、わざわざすべて付け替えられたらしいシャツのボタンを見つめて頭を抱えたくなる。

赤司が、あの赤司がこんなものに労力を回すなんて…他の人間が聞いたら卒倒ものだよ…。

しかしここで負けてはいけない。引き攣るな顔。頑張れ私。
ついでに胸ポケット位置に見つけてしまったウサギさんな刺繍も見なかったことに…できるか。できねーよ。



「赤司くんこれ学校で着るシャツなんだけど」

「大丈夫だ、ちゃんとブレザーで隠れる位置に刺繍したからな」

「いや、そーゆーこっちゃ…」



ないんだけど…なぁ……。

私の反応が著しくなかったことに、分かりにくいが沈み始めるオーラを見れば、否定してしまうこともできなくて。

しゅんとしながら見つめてくるそいつの顔は可愛いものだから、ついつい私は笑顔で礼を言う選択肢以外は選べなくなってしまうのだった。






オトメンっぽい隣人が可愛すぎて俺はもうダメかもしれない




(でも、ちょっと張り切りすぎだとは思うよ…)
(…すまない。だがこんな趣味を知って付き合ってくれるのはなまえしか…)
(…ああ、もういいよ! いくらでもお付き合いしましょうとも)
(! なまえ…!)
(ついでに私も女子力でも研くかね…)

20121115. 

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