相棒の迎えや相棒のフォロー、バスケに支配されていた日々に、最近一つだけ例外が生まれた。
それは所謂男女のお付き合いというやつで、それまでは自然と視野に入れていなかった部類の事情。

だけどまぁ、オレの彼女のなまえという女子は其処いらの女子とは一味違って。
付き合うどうのこうの考える前にハマっちゃうくらいは、可愛いと思う。贔屓目もあるけど。



「あ、蜘蛛の巣!」



今日もまた二人っきりの昼休みだというのに、すぐに些細なものに気を取られて目を輝かせる。
一体同級生の女子のどれくらいの人間が蜘蛛の巣に気をとられるんだろうかと、真面目に考えて吹き出した。

やっぱ面白いわこの子。



「なーに? オレより蜘蛛の巣に興味アリアリなんだなまえちゃんは」

「はっ、い、いえまさか! 高尾くんに勝る被写体は私にはないですっ! 浮気してません!!」

「ぶふっ」



浮気って。

至極真面目な顔で振り返るなまえに、反射的に口を押さえる。
ヤバい。もう、マジで面白い。

しかも被写体とかいう意味で受け取られてるし。
どこまでも天然をぶっこく彼女を、あーもー可愛いなー、と頭を撫でると少しだけ驚いた後に照れた笑顔が返ってくる。
一々ツボにハマっていくのを自覚しながら、これはこれでいい青春なんじゃないのかなんて、思ったり。



(バスケは大事だけど)



大事なものを優先することを笑顔で見守られてるってのも、中々いいものだと思う。
オレに必死なものがあるように彼女にも必死になれるものがあって、過ごす時間は削られるけど興味の幅は広がって。

例えばきっと蜘蛛の巣だとか、日常では些細で見落としてしまうようなものの魅力ですら、彼女は知っているんだろう。
同じようにオレの中からいいものを探し出してくれる彼女との、暴かれたり暴き返したりのやり取りは楽しい。



「オレ本当、なまえ大好きだわ」

「! わ、私も」



直接的な好意の言葉に頬を染めながら返してくれようとする可愛い彼女の姿に、にんまり口角を上げるオレの右手には、こっそりと握られる携帯が。



「高尾くん大好きですっ」



これ以上ないくらいの満面の笑みと、間抜けな電子音が響くのは同時だった。






究極の一枚




(っ!? え、とっ、撮られた…!?)
(やー、可愛い。オレの彼女ホント可愛い)
(いいいや高尾くんの贔屓目凄すぎると思うんですけど!? …あ、でもすごい。高尾くん撮るのうまくなりましたね!)
(マジで!? やっぱ毎度指導されてっからなー。んじゃ次はなまえちゃんがバスケうまくなる番だな)
(えっ…あ、えっ、が、頑張ります…けど私体育は万年アヒルさん…)
(ぶっは!!)

20121114. 

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