たまに加わるガールズトークというものは、中々面白い。
女子特有の計算高さやえげつなさの飛び交うその中に加わり、後輩の女の子からお裾分けされたクッキーを貪りながら、私は標的にされないことをいいことに聞き手に回っていた。

しかし今までならそれで許されていた環境も、事情が変わればそうもいかないらしく。
学年一と言っていい色男に最近妙に構われまくっているらしい私は、両サイドからがっちりと腕を捕んで逃げ道をなくされ、まだ半分ほど中身の残った袋を取り上げられてしまった。



「クッキー…」

「いやいや、この期に及んでお菓子気にするなっつの!」

「それで? 可愛い可愛いなまえちゃんは氷室くんとどーゆー関係なのかなー?」



さぁ吐け吐いてしまえ、と見下ろしてくる集団女子の目の色と言ったら、正にハイエナのようだった。

そんな彼女らにやりにくいなぁといった感想をぼんやり抱きながら、無難に首を傾げておく。
どういう関係もこういう関係も、ぶっちゃけてしまえばないわけで。

邪推しすぎだよ、と困り顔を作る私に、それでも彼女らは納得してくれないらしかった。



「どー考えてもいちゃついてるようにしか見えないんだっつの!」

「確かに、氷室くんは優しいわよ! でもあんなに特定の女子に構う人でもないでしょ!?」

「…珍獣扱いされてるんじゃない?」

「はぁ!?」



カッ、と一斉に目を剥くクラスメイトに、軽く後ろに下がりたくなった。
残念ながら椅子に座って腕を捕まれた状態では、願いは叶わなかったけれど。



「いや…私昔から、何考えてるか解らないって言われるから」



ぼうっとしていたり個人行動が多いからか、幼い頃から遠巻きにされることは多かった。
私自身その環境は嫌いではなかったし、今でもその癖は抜けず、友達は作っても現代っ子らしくいつも傍にいて話し込んだりすることも少ない。
別に苦手でもない男子との関わりが少ないのも、その延長線上の結果だ。

だから彼も物珍しくて近付いてくるのだと、思っているのだが。
私を囲む数人の女子達はそうは考えないらしい。



「確かに、氷室くんみたいな人が私らレベルの女子に興味抱くってのもしっくりこないけどー…」

「でも全くそういう気がないようには見えないよねぇ」

「んー…じゃ、身体とか? 何だかんだ言ってなまえって脱いだらスゴいタイプでしょ」

「うっわー、でも氷室くん相手なら遊ばれても逆に得かも…」

「狙われてんじゃんなまえ!」

「えー…?」



言いたい放題になるのは女子的会話では仕方のないことだとは思うけれど、仮にも親しい人間を遊び人のように言われてしまうと、考え込んでしまう。



(身体って、またえげつないなぁ…)



それこそ氷室くんレベルなら相手なんて山程転がっているだろうし、一々クラスメイトなんて面倒な人間を相手に選びはしないだろう。
それに、確かに異常なほど色気を発している彼だが…傍で見てみると意外と子供っぽいところが見え隠れしていたりするのだ。



「…氷室くん、そんなに軽い人じゃないよ?」



人付き合いのよさでカバーしているけれど、大事なものだけしっかりと抱え込むタイプで。
必要な遊びはしても、火遊びを楽しむような人ではない。本当に嬉しい時、楽しい時には意外なほど素直に表情を綻ばせる人だ。

理知的な性格も漂う色気も、確かに全てを否定するわけではないけれど。
本質は面倒で可愛い人間なんじゃないかと、思う私の意見は胸の底に仕舞っておくことにした。








乙女の気持ち




別に、楽しいのなら楽しんでいればいいのだし。
悪意から近づかれているわけでもないのだから、明確な答えなんて私には必要ないのだ。



(えー…じゃあなまえは氷室くんどう思ってんのよ)
(…ヴィーナスの化身)
(ぶっは!!)
(あっは! 解る!!)
(いやそれ感情じゃないしっ!…でも確かに美人だよね)
(いっそ性別交換した方が正しい気がしてくるよ)
(それは…近くに居座る勇気ないわ)
(氷室くんは鑑賞用だもんねー)

20121122. 

[ prev / next ]
[ back ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -