番外:12/26

「おい」
 声を掛けると、肩を跳ねさせながら、丸まっていた背中がピンとのびた。そのままきょろきょろと周りを見回すので、溜め息をつく。
「お前しか居ねーだろうが。雛河」
「え、っあ、…ぇと、…な、なに、…」
 名前を呼ばれてまた肩を揺らした雛河は、一瞬こちらを見て、合わさった視線におたおたと目を泳がせる。多少苛ついたが、一度視線を外し、細く長く息を吐いて平静を装った。今日は怒鳴らない、怒鳴らない。自分に言い聞かせながらもう一度雛河を見る。
「っ、」
 ぱっと視線をそらされた。どうも俺が見ていないからとこっちを見ていたらしいが、そうもあからさまだとやはり腹が立つ。誰にでもそうだと言うのはわかっているし、俺なんかはよく怒鳴るから余計にだろうと言うのもわかる。ただ、結局それに腹が立つのだから、悪循環というのは恐ろしいものだ。
「…、…ひなかわ。」
 もう一度深呼吸して、なるべく落ち着いた声を出すよう意識しながら口を開いた。また少し体がこわばったのを捉えながら、半ばやけくそで続ける。
「誕生日、おめでとう」
 長い前髪の間から覗く目が大きく見開かれたのがわかって、急に照れくさくなった俺は、それだけだから、とだけ言ってその場から逃げ出した。


了。

雛河主を考えたらツンデレになりました。ツンギレ?
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