なくしたナニカ
ゆめを、みる。 いつからかはわからないけれど、度々、おなじ夢をみる。
「ガトーさんっ」 明るい声が鼓膜をたたく。振り返ると笑っている青年がいて、おれはそいつをよく知ってる。 「なんでぇ、また来たのか」 " "、と。確かにそいつの名前を俺は呼ぶのに、音にならない。思い出せない。そいつの顔だって、光にぼやけてよく見えない。
夢の中でそいつは、まるで犬のようにおれにくっついてまわっては、名前を呼び、笑いかけて、おれが何か言うたびに幸せそうにまた顔を緩める。 おれもそれが心地よくて、つい構ってしまう。 知らない場所で、知らない相手と、ただ緩やかな日々を過ごしているだけの、ぼんやりとした、ゆめだ。 けれどたまに、見知った顔が居ることもあって。 一番多いのはオグマだ。あの人見知りが、ぎこちなくも普通にコミュニケーションをとっている場面が時折あった。夢の中とはいえ、知らない人間が、知っているやつと仲睦まじく話しているのを見るのは少し気持ちが悪かった。 オグマは、明らかに年下にみえるそいつを「" "殿」と呼ぶ。おれはその違和感が疑問にしかならないし、いっそ尋ねてみたいとすら思うのに、夢の中のおれは何の疑問も持たずに、その二人の会話に混ざっている。
目が覚めると夢の内容はほとんど覚えていない。もっとたくさん、いろんなことがあったような気がするのに、こんな、穏やかでなんてこと無いようなところしか覚えていない。 前は夢を見る頻度もそんなに高くないし、本当に忘れたころに見るか見ないか、と言った感じだった。しかし最近、やけに夢を見る頻度が上がっているように思う。 なにかの前触れだろうか。だとしても、それがなにかなんてわかるわけも無い。
そして今日もまた、知らない声がおれを呼ぶ。
了
勝手にガトーさん一人称だから違うとことかめっちゃありそうで震えてる… でもかきたかったんだ……
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