10000 | ナノ
性別不明男主×来神臨也


*性別不明来神主におろおろする臨也が苛められる話(Nick様)
*という訳で来神臨也さんです















「あ、おはよう臨也。今日は遅かったね」
「ん、まぁね」

言いながら渡された絆創膏を受け取り、擦り剥いてしまった頬に張り付けた。
朝からシズちゃんに追い掛けられてしまった為、俺が教室に着いたのは既に一時間目の授業が終わった後だった。
そして、教室の一角に出来ている人だかりに目を向ける。
きゃあきゃあと同じクラスの女の子達が一つの席を囲うように集まって興奮気味にその中心にいるだろう誰かに話しかけていた。
確かあの席は空席だったはずだけど。

「あれかい?転入生だよ」
「へぇ、随分時期外れだね」
「家庭の事情だって言ってたよ」

家庭の事情、ね。

「…臨也?」
「ちょっと挨拶してくる」
「止めときなよ、興味津々な顔してるし…って、ちょっと、臨也!」

新羅が後ろから声を掛けて来るけど、そんなの無視して人だかりに分け入った。
数人の女子がおはよう折原君と声を掛けて来るのに笑顔で返し、噂の転校生に視線を向ける。

肩に掛かる程度に整えられた髪と穏やかな笑みを浮かべる俺と同じ学生服を纏った、彼。
男か、と思いつつ顔に笑みを貼り付け名乗る。

「初めまして、僕は折原臨也、よろしく」
「うん、よろしくね、僕は…」

声は、思ったよりも高かった。
女性寄りの中性的な顔立ちにとても似合っている甘やかなテノールで、素直に綺麗な声だと思った。

「…なまえくん、っていってね、今日ウチのクラスに転入して来たんだよ、って、あれ、折原君?聞いてる?」
「え?ああ、ごめん、聞いてるよ」

慌てて聞いてもいない説明をしてくれている女子に取り繕う。
俺とした事がぼんやりして名字を聞き逃した。
まあそれは後でどうとでも、知る機会は幾らでもあるから特別困りはしないだろうけど。

「じゃあ、なまえ君、転入したてで困った事があったら何でも聞いてよ」
「ふふ、ありがとう臨也くん?」

にこ、と笑みを浮かべて席を離れると、彼の方も微笑んでひらりと手を振った。
俺が抜けた輪を埋める様に女子が早々に囲んでしまった為にすぐにその姿は人の壁に隠れてしまったけれど。
新羅の所に戻ると、眼鏡の奥の瞳がじっとりと細まっていた。

「ただいま」
「おかえり、収穫はあったかい?」
「うーん、中性的な顔立ちで女子には魅力的だろうけど第一印象では普通そうな人だなぁ」
「ちょっかいだしてもいいけど、やるなら俺が関係しない所でやってくれよ」
「冷たいなぁ新羅、友達じゃないか」
「友達だけど、面倒に巻き込まれるのは御免だよ」

まあ、面白くないなら俺が面白くすればいいだけの事だし。
これから観察を続けていけば、新たな発見があるかもしれないし。
半年以上を同じ顔ぶれで過ごした中、彼という季節外れの転入生はその肩書だけでも俺の好奇心を掻き立てるには十分だった。
さて、これからどうやって遊ぼうかと計画を立てていた矢先。
転入生は驚く事に俺の予想の斜め上をいった。

翌日、無事に登校した俺が見たのはなまえのセーラー服姿だった。
思わず目を見開いて立ち止まっていると、隣にいた新羅が「あれ、女の子だったんだ?」と呟いた。

そりゃあ、今、この状況だけを見ればただのセーラー服を着た昨日来たばかりの転入生だろうけど。
昨日、この目でしっかりと学生服を着こなしているのを見ているからなのか頭が追い付かない。

「あ、おはよう臨也くん、新羅くん」
「おはようなまえ君、驚いたよ、女の子だったのかい?」
「んー?さぁ、どうだろうね?」

新羅の問いに、くすくすと楽しそうに笑ってはぐらかしたなまえは、スカートの裾を軽く摘んでくるりとその場で回って見せた。

「どうかな、似合う?」
「うん、そうだねぇ、似合うか似合わないかで答えるなら、似合ってるよ。昨日の学ランよりよっぽどね」
「ありがとう新羅くん、臨也くんは?」

向かい合うとなまえの方が低い身長のせいで、丸みのある大きな瞳が俺を興味深そうに見上げてくる。

「ぇ、似合ってる、よ」
「ふふ、そっか」

にこ、と満足そうに笑ったなまえは再び新羅との会話に戻ってしまった。

「あれ、じゃあ昨日の学ランはどうしたんだい?」
「ああ、ちょっと手違いがあってコレが遅れちゃったから転入日に間に合わなかったんだ」
「へぇ、」
「昨日帰って来てからやっと届いてね、やっぱり僕にはこれが似合うから」

くすくすと笑い合う新羅となまえを見ながら、席に座る。
セーラー服を纏うなまえは、どこからどう見ても女の子だった。
スカートの裾から伸びるすらりとした足や、綺麗に整えられた爪先だとか。

ああ、なんだ。

昨日なまえに感じた違和感はこれだったのか。
男装した女の子に感じた珍しさを俺自身が錯覚してしまったのかもしれない。
早急になまえへの興味を失くした俺は、次の興味へと思いを巡らせた。





そしてまた翌日。
俺はバッグを落とす。
登校してきたなまえは、再び学生服に袖を通していた。

…なんなの、一体。

誰にその理由を聞かれても「さあ?どうだろうね?」とにこやかにはぐらかして煙に巻く。
しかも、驚く事にクラスメイト達は日替わりで制服を着替えるなまえを完全に自分の同性として認識していた。
優しく快活な人懐こい性格の前では性別など些細な事だと言わんばかりに転入してたったの5日でクラスの中心的存在になったなまえの周囲にはいつも誰かしらの人間が居た。
そんな彼らを観察しつつ、シズちゃんへの嫌がらせを考え実行する日々がいくつか過ぎたある日。

「臨也くん、次科学室だって」
「え、そうだっけ?」

シズちゃんとの追いかけっこから戻った俺を待っていたのはなまえその人で、新羅をはじめとするなまえ以外のクラスメイトの姿は確認出来なかった。
手には教科書とノート、筆記具を持ち俺の席に腰掛けていたなまえは俺が教室に入るなりそう言って立ち上がった。
ちなみに、今日は学生服を纏っている。
最近では俺と新羅、なまえの三人で行動する事が多いが、今日は新羅一人が先に行ってしまったようだ。薄情な奴め。
なまえが取ってくれた教科書とノートを受け取り、机に置いていた筆記具を手に教室を出る。
チャイムがなるまであと5分。
特に急ぐ事もなく、ゆったりと二人並んで科学室へのみちのりを歩く。

「今日のお昼どうしようかー」
「あれ、今日はお弁当じゃないの?」
「うん、ちょっと寝坊しそうになっちゃってさ。かと言ってお金も無いしー」
「ふーん、間抜けだねぇ。シズちゃんみたい。ご愁傷様」
「あっ!臨也くん冷たいなぁ、友達がお昼ご飯食べられなくて餓死しちゃってもいいっていうの?」
「一食抜いたぐらいじゃ死なないよ、それに君ならクラスの誰かから分けて貰えるだろう?」
「臨也くんごはん買って」
「やだよ」

ぷぅ、と頬を膨らませる幼い仕種にふと頬が緩む。
そして、良い事思いついた!とニィ、と口角を吊り上げるなまえ。

「じゃあさ、僕が出すクイズに臨也くんが答えられなかったら今日のお昼は臨也くんの奢りって事で!」
「はぁ、何勝手に…」
「はい、という訳でクイズでーす」

朗らかに宣言したなまえは不意に俺へ手を伸ばす。
ぐ、と後頭部を掴まれ笑みを浮かべるなまえの顔が近付く、近付く。
ぼやける程近くなったなまえの目が、細まり閉じられる。
そうして、唇に何かが触れる。

「んっ、う!?」

なに、と口を開いた隙間を狙ってぬるりと侵入する、それ。絡め取られ、吸い付かれ、呼吸すら奪う様な激しいキスに思考が溶け始める。
する、と妖しく腰を撫でる手付きにも翻弄され ぞくぞくと悪寒にも似た快感が背筋を走る。

「ふ、ぅ…っ、んぁ、」

酸欠から必死に押し返すとようやく解放され、力の抜けた足と腰が砕けてへたりと廊下に座り込んだ。
はっ、はっ、と荒くなった呼吸を整えながら伝った唾液を拭うなまえを睨み付けると視線を合わせる様にしゃがみこまれ、愉しげに口元が弧を描く。

「今臨也にキスをしたのは、男でしょうか、女でしょうか?」

するりと頬を撫でる手に、びくりと身体が跳ねた。
耳元で囁かれる言葉に思わず頬が熱くなる。
けれど、それでも無意識の内に頷く俺に、なまえはまた愉しそうに笑った。
薄い現実感に遠くで聞こえるチャイムがゲームの開始だったのか終了だったのか、今の俺には分からなかった。














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なんだか超展開過ぎる気がしないでもないですが。
リクエストに添えていない気がするのはいつもの事です☆←すみませんすみません
とりあえず分かりにくいけれど臨也さんは一目惚れです。
Nick様素敵なリクエストありがとうございました!




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