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「白状しなさい」
「マッタクモッテ身ニ覚エガゴザイマセン」
「嘘おっしゃい!」

ばん!とテーブルを叩いて尋問しているのはお兄さん。
つい、と視線を逸らして白を切っているのはシンデレラ。
お姉さん達は今回ばかりはお兄さんの味方らしく、ふわっふわきゃるるんなロリータ服やかなりきわどい位置まで入っているスリットが眩しいチャイナ服、マニア垂涎の品だろう計算し尽くされたセーラー服等をシンデレラに見せる様に抱えているその眼はキラキラと好奇心に満ち溢れています。
お兄さんがぱちんと指を鳴らすと、それを合図にお姉さん(姉の方)がさっとテーブルの上にガラスの靴を片方だけ載せました。

「これ、昨日シンデレラが履いてたやつだよね?」
「履イテマセン」
「昨日シンデレラが俺の頭を殴り付けて粉砕した挙句にトドメと言わんばかりに投げ付けた残りの片方がこの靴だよね?」
「ソンナ事私ガスル訳ナイジャナイデスカ、嫌デスワ、オ兄様ッタラ」
「さっきからあからさまに動揺しすぎて聞き辛いし読み辛いよ、シンデレラ」
「童謡ナンテしてないってバ」
「落ち着いて」

だらだらと冷や汗が伝っているシンデレラは一度もお兄さん達の方へ視線を合わそうとしません。
そんなに昨日の恰好が恥ずかしかったのでしょうか。僕にはさっぱり理解出来ません。
可愛かったのに。

「ナレーション煩い!」

酷い。
頑として認めないシンデレラに、いつになく強気で楽しそうなお兄さんはニヤニヤと緩む口元をそのままにシンデレラを抱き寄せると膝の上に乗せて見上げる形にしました。
見上げたシンデレラの顔は、羞恥から耳まで真っ赤にして瞳は軽く潤んでいる様でした。
滅多に無いシンデレラの劣勢に、お兄さんは攻撃の手を緩めません。
シンデレラが言い逃れ出来ない様に逃げ道を一つ一つ確実に潰していきます。

「ねぇ、別にさぁ?俺は怒ってる訳じゃないんだよ?ただ昨日ダンスパーティーで着てたドレスをもう一回着て見せて、って言ってるだけじゃない」
「だからダンスパーティーなんて行ってないってば」
「ふぅん?まだ言うんだ?」

もう一度指を鳴らすと、今度はお姉さん(妹の方)が黒い靴をテーブルに載せました。
お兄さん、お姉さん、シンデレラには当然見覚えがあります。

「これ、昨日俺が履いて行った靴なんだけどシンデレラ(仮)に強奪された筈なのにどうして家にあるのかな?」
「今朝早くに親切な小人さんが拾って届けてくれたの」
「さっきガラスの靴履かせた時、サイズぴったりだったよね?」
「私と足のサイズが同じ人間なんてどこにでもいるわ」
「足の指にも当然指紋があってね」
「素足で靴を履く習慣が無いもので。だけど……おっと手がスベッタァーーー!!」
「九瑠璃!」
「…了(はい)」

テーブルのガラスの靴を払い落とそうとしたシンデレラの手より先に、お姉さんが持ち上げたおかげで靴は無事にその美しい形を保っていました。
ちっ、とシンデレラの舌打ちが響きます。
この行動でほとんど肯定している様なものですが、シンデレラは往生際が悪いです。
それ程あの恰好が恥ずかしかったんですね、わかりません。

「こら、暴れないでよシンデレラ」
「しょーがないじゃない、手が滑ったんだもの」
「ふーん、じゃあこれでダメ押しだ」

ニヤリと口元を吊り上げたお兄さんの言葉とほとんど同じタイミングで来客を告げるノックが響きました。
チャンスとばかりに出迎えようとしたシンデレラを抱き締める事で阻止したお兄さんに促されてお姉さん達が代わりにドアを開けると、そこには木こりが立っていました。

「…九十九屋?何しに来たの?」
「よぉ、シンデレラ」

訝しげに訊ねるシンデレラに、木こりは飄々と笑ってばさりと白いドレスを広げました。

「いや、お前昨日うちで着替えた時に忘れて行ったから届けてに来てやったんだよ」
「忘れたんじゃなくて置いて行ったのよばーか!」

正に、それは昨日シンデレラが魔法少女に着せられて舞踏会へ赴いたドレスでした。ご丁寧にクリーニングにも出してあります。
それを近くにいた舞流に手渡すと、木こりは手を振りながらさっさと帰っていきました。
後にはニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべるお兄さんと、楽しそうにシンデレラに着せる服を選び始めているお姉さん達と、言い逃れ出来なくなったシンデレラがあぅあぅとそれでもまだ何か言おうと口を開いたり閉じたりしていましたが、結局その桜色の唇から意味のある言葉が紡がれる事はありませんでした。

「どう?シンデレラ。まだ何かある?」
「ぅ、うー…っ」
「それじゃあシンデレラちゃん、お着替えしましょー!」
「…衣…溢(たくさんあるからね)」

ぎゅっ、とお兄さんに抱き締められたシンデレラに、今更逃げ場などある筈も無く。

「やっ、ちょ…!ちょ、−−−−ッ!?」





(きゃああぁっ!シンデレラちゃん超カワイー!!)
(…褒…愛)
(次はどれにするー?)






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