Story of Stars! | ナノ
「あれ、先輩。今日は一人で帰るんですか?」
放課後。部活が終わって靴箱で靴を履きかえていると、後ろから声がかかった。見れば、少し目をしている拓斗くん。私はいつも楓と帰っているから、意外だと思ったのかもしれない。
「うん、剣道部はまだ終わってないし……先に帰っててって言われたから」
「ああ、なるほど……じゃ、僕と帰りません?」
「拓斗くんと?」
「……嫌ですか」
「いっ、嫌じゃないよ!!」
拓斗くんはどうしてこういうことを言うのだろうか。……まあ、私の反応を見て楽しんでいるんだろうけど。今だって、くすくすと笑っているし。
「……帰ろっか、拓斗くん」
「ホントですか!やった」
ふう、とため息をつき、笑いながらそう言えば、拓斗くんはにっと笑って私の隣に立ち、歩き始める。
日はだいぶ落ちたけれど、まだ暑い。歩けば、少しだけれど汗が出てくる。
「暑いですね、先輩」
「そうだねぇ」
「あ、そうだ。先輩、あそこのコンビニに寄りましょう」
「え?あっ、ちょっと拓斗くん……!?」
私の手を掴んでコンビニに向かう拓斗くんに抵抗できず、そのままコンビニの中に入ってしまう。店内は冷房が効いていて、とても涼しい。
「ちょっと待っててくださいね、先輩」
「あ、うん」
入口の近くにある雑誌コーナーをぼんやり眺めながら拓斗くんが戻ってくるのを待つ。しばらくすると彼はコンビニの袋を片手に戻って来たので、一緒にお店から出て、また歩き出す。
「何を買ったの?」
「これです」
そう言って拓斗くんが袋から取り出したのは、カップアイス。なるほど、暑いもんね。そんなことを思っているうちに、拓斗くんはカップのふたを開けてパクパクとアイスを食べ始めていた。
「私もアイス買えばよかったかも」
「ん……先輩、僕のどーぞ」
「えっ!?」
にっこりと笑ってアイスを差し出す拓斗くんに、私は慌てて首を横に振る。そんなつもりで言ったんじゃないし……後輩にものをもらうなんてできない!
「いいよ!それ、拓斗くんのだしっ」
「僕は別にかまいませんよ?」
「でも、」
「むしろ僕だけ食べてるのも申し訳ないし。ほら、先輩」
ずい、とアイスを差し出されて困ってしまう。こう、強引にされると私は弱い。それに、これは拓斗くんなりの厚意なのだろう、そう思うと断れない。
「うう……じゃあ、その。ひとくちだけ」
「全部あげますって」
「だめ!」
「じゃあほら、半ぶんだけとか」
「……ひとくちじゃだめなの?」
「んー…どうせなら半ぶんくらい食べてほしいです。それでおあいこになりますし」
「……じゃあ、半ぶんいただきます」
「はい!先輩からどーぞ」
「あ、ありがとう」
拓斗くんからアイスを受け取って、遠慮がちに食べ始める。楓ちゃんと一緒だと寄り道とか、食べ歩きとかしないから、新しい体験だ。たまにはこういうのも、いいかもしれない。
アイスを半ぶんこ
(あ、間接キスですね。先輩?)
(か……っ!?)
(あはは、顔真っ赤)
(も、もー!拓斗くんのばか!)
Title by 確かに恋だった
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